<バイデンの対中関税は悪手>保護主義で米国の産業力は弱く、中国は強くなる懸念
なぜ、米国は中国と交渉しない
バイデンは5月14日、1974年通商法301条に基づき、EV、半導体、医療用製品など7項目にわたる中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。 大統領府のファクトシートによると、具体的には(1)鉄鋼アルミの関税を25%から50%へ、(2)半導体の関税を25%から50%へ、(3)EVの関税を25%から100%へ、(4)リチウムイオンEV電池・その他電池部品の関税を7.5%から50%へ、一部の重要鉱物の関税をゼロから25%へ、(5)太陽光パネルの関税を25%から50%へ、(6)港湾クレーンの関税を0%から25%へ、(7)医療産品につき、注射器・注射針の関税は0%から50%へ、マスク等個人保護具の関税は0~7.5%から25%へ、医療用ゴム手袋は7.5%から25%に引き上げる。中国からの輸入品180億ドル相当が対象になる。 上記論説で、ルースは5月14日のバイデンの関税引上げにつき極めて批判的である。しかし、ルースは、バイデンの14日の関税引上げにつき秋の選挙に勝つのであれば米の民主主義のためとしてそれを事後的に認め得ると考えているようだ。しかし、やはりバイデンの今回対中関税は貿易政策としてはおかしい。 米国は、中国にその不公正な慣行を止めさせるのではなく、米国の側が保護主義になることによって自国を防御しようとしているようだ。防御するよりも、なぜ80年代に米が日本に対して圧力をかけたように圧力と交渉で中国を変えさせようとしないのか。
保護主義に変わったところで、米国の得になることは何もない。根本的な解決にならない。 WTOは、米国がそれを無力化したため、中国の不公正慣行に圧力を掛ける力を失っている。ルールを変更しようとしても今のWTOにはできない。 記事は、今回中国に対し要求リストも出していないと指摘、「WTOにおいて、そもそもルールがないからだ」という。何も要求しないで関税を上げるだけでは、相手もいかに改善すべきかが分からない。交渉しない限り、関税報復のスパイラルで終わってしまう。