日本柔道がフランスで結果を出す意義
東京五輪の再現なるか―。7月26日に開幕するパリ五輪で、日本勢の活躍が期待されるのが柔道だ。3年前の自国での五輪では、日本柔道史上最多となる9個の金メダルを獲得した。大会序盤の活躍ぶりは国内の五輪ムードの高まりに影響を与えるだけに、注目度は高い。日本のお家芸に絡んで東京大会後にはさまざまな出来事が起きた。世界でも屈指の柔道人気を誇るフランスの地で、競技発祥国としての意地が試される。
◾️スタートダッシュ
3年前の東京大会では、男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)、女子52キロ級の阿部詩(当時日体大、現パーク24)が兄妹同日優勝という偉業を達成したのをはじめ、男子で5個、女子で4個の金メダルを量産した。今回のパリ大会では開会式翌日の27日に男子60キロ級の永山竜樹、女子48キロ級で昨年まで世界選手権3連覇の角田夏実(ともにSBC湘南美容クリニック)が出場する軽量級からスタートし、個人は男女各7階級ずつが8月2日まで実施される。阿部兄妹の他、男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)と同100キロ級のウルフ・アロン、女子78キロ超級の素根輝(ともにパーク24)に2連覇が懸かる布陣だ。 海外開催の五輪では史上最多人数となった日本選手団。日本オリンピック委員会(JOC)は金メダル数の目標を海外での最多の20個に置いた。数字について、日本選手団の尾県貢団長は「今までのデータに基づいているので、妥当なところだと思う」と説明。大会序盤の競技でのスタートダッシュは極めて重要になる。 代表選考において、全日本柔道連盟は前回大会で採用した早期内定制度を今回も継続した。明らかな力の差を認められる階級では早めに内定を出すことによって、腰を据えての計画的な強化が可能になり、代表レースの長期化で五輪本番まで疲労が抜けない事態を避けることもできる。東京五輪では躍進の要因の一つに挙げられた。しかも今回は、最初に内定を出したタイミングが、新型コロナウイルス禍で1年延期になる前の東京五輪の時より早かった。阿部兄妹らは実にパリ五輪の1年以上前となる昨年6月に内定を得た。兄の一二三は前向きにこう語っていた。「1年以上もらえたので、しっかり準備して、圧倒的に勝つ柔道を見せたい」。手応え十分のたたずまいだ。