ベット・ゴードンが特集上映にメッセージ、小津安二郎・黒澤明ら日本の監督からの影響語る
特集上映「ベット・ゴードン エンプティニューヨーク」より、ベット・ゴードンが日本の観客に贈ったメッセージ動画がYouTubeで公開された。 【動画】ベット・ゴードンのメッセージ映像はこちら セクシュアリティ、欲望、権力をテーマに創作を行ったゴードンに焦点を当てた本特集では、3本が劇場初公開。1983年に発表した長編第1作「ヴァラエティ(2K修復版)」、キャリア初期の実験映画作家としての側面が色濃く出ている中編「エンプティ・スーツケース」、短編「エニバディズ・ウーマン」がスクリーンにかけられる。 ゴードンは映像の中で「日本の偉大な映画作家たちに影響を受けました」と切り出し、小津安二郎の「東京物語」「浮草」「秋日和」を例に挙げ「映像の対称性やフレームの中にフレームがある手法は『ヴァラエティ』を作る際に触発されました。すべてのショットが絵画のように意図されています」と語る。 さらに黒澤明の「乱」や溝口健二の「雨月物語」、大島渚の「愛のコリーダ」についても言及するほか、現代の日本映画では是枝裕和、濱口竜介の作品に感嘆していることも。彼女は「日本の若い世代の監督や観客の皆さんと映画的ビジョンを共有できることに興奮しています」「みんな一緒に同じ映画を観ることが、わたしにとっても、あなたにとっても特別になりますように」と呼びかけた。 あわせて7名からの推薦コメントも到着。俳優・美術家の遠藤麻衣は「ままならない状況で、自分が破滅にむかっているかもしれないと予感しつつも欲望のままつき進んでしまう様子が孤独で痛々しくも、映画のまなざしは優しく見守るように温かかったです」とつづった。 「ベット・ゴードン エンプティニューヨーク」は11月16日より東京のシアター・イメージフォーラム、12月7日より大阪のシネ・ヌーヴォほか全国で順次公開される。 ■ ベット・ゴードン エンプティニューヨーク 2024年11月16日(土)~ 東京都 シアター・イメージフォーラム 2024年12月7日(土)~ 大阪府 シネ・ヌーヴォ ほか全国順次開催 □ 上映作品 ・ヴァラエティ(2K修復版) ・エンプティ・スーツケース ・エニバディズ・ウーマン ■ 遠藤麻衣(俳優 / 美術家)コメント 制作クレジットに名を連ねているナン・ゴールディンやリジー・ボーデンは私も大好きなアーティストたちです。彼女らの作品に自伝的な要素があるように、ベット・ゴードンの映画も当時の社会が生々しく記録されているように感じました。 ままならない状況で、自分が破滅にむかっているかもしれないと予感しつつも欲望のままつき進んでしまう様子が孤独で痛々しくも、映画のまなざしは優しく見守るように温かかったです。 ■ 遠藤倫子(映画zine「ORGASM」発行人)コメント 「エンプティ・スーツケース」と「エニバディズ・ウーマン」を経て作られた「ヴァラエティ」は、思いもよらない方向へ突き進み、クリスティーンは社会や恋人に愛想を尽かしたかのように自由に勝手にトランスフォームを遂げてゆく。常識も正解も、この作品のなかではまるで無益なのがひたすら嬉しい。ざらついた質感でみる夢のearly80sニューヨーク。わたしも今すぐSIN CITY(悪徳の都)という名の口紅を手に入れないと。 ■ 斉藤綾子(映画研究者 / 明治学院大学文学部教授)コメント 男たちの幻想が渦巻くポルノの世界。ベット・ゴードンは大胆に「もう一つ別の物語」を女の眼差しと欲望で切り込む。女たちが棲息するイースト・ヴィレッジは刺激的で、予想外の好奇心と快楽、そして危険に満ちあふれている。そこはまさにポスト・アケルマンのニューヨークだ。 ■ 長島有里枝(アーティスト)コメント 三作品とも、ずっと語られてこなかった第二波、第三波フェミニズムのなだらかな繋がりを証言していた。わたしの憧れたNYを体現するアーティストたちの若かりし姿、表現の荒っぽさ、生々しさの記録にとんでもなく興奮した! ■ 野中モモ(翻訳者 / ライター)コメント やさぐれてるけど暖かい色調で映し出される、今では失われてしまったニューヨーク。これはパティ・スミスとかキム・ゴードンとかデヴィッド・バーンの本で読んだやつ! パンク/ニューウェイヴ/ポストパンク好きなひと必見。 ■ 堀潤之(映画研究者 / 関西大学文学部教授)コメント ヒッチコック的な取り澄ましたブロンド女性を、「タクシードライバー」にでも出てきそうなポルノ映画館のチケット売り場に座らせ、暗黒街とつながりのあるらしい胡散臭い紳士を尾行させる──この心躍る設定によって、「ヴァラエティ」のベット・ゴードンは男女間の視線の政治学を鮮やかに反転してみせた。その遊戯的な秩序転覆ぶりは、「勝手にしやがれ」で映画に開眼したというだけあって、ゴダールにも通じる挑発に充ちている。 ■ 渡辺佐智江(翻訳家)コメント 「ヴァラエティ」──1980年代初頭、NY、女、という括りで言えば、アベル・フェラーラ「天使の復讐」に遭遇したとき以来の衝撃だった。制作から40年を超える時を経た今、日本でクリスティーンはどう語られるのか。