「回答例教えて」就活で3人に1人が生成AIを活用 面接官に見立てるケースも
「ニュースに対する見解を求められたときの回答例を教えて」-。企業による採用選考活動が6月に解禁され、勝負の時期を迎えた大学生らの就職活動。最近は対話型人工知能(AI)「チャットGPT」など生成AIを活用する学生が目立っており、5月末時点の民間調査で3人に1人が就活に活用済みであることが分かった。生成AIを面接官に見立てて想定問答を作成するケースが一定数みられ、企業側からは補助的な利用方法にとどめるよう求める声も上がっている。 ◆就活利用前年の2倍 「(自作の)以下のエントリーシート(ES)に対して、新卒採用を行う企業はどのような質問、深掘りをすると考えられるか」 「(面接で想定される質問を示し)この質問で何を問われているのか、何を判断されうるのか教えて」 就活情報サービス大手のマイナビが来年春卒業予定の大学生らを対象に実施した実態調査(調査期間5月25~31日)では、学生による生成AIの具体的な利用事例が多数示された。 生成AIは人間の指示に従って文章や画像を生み出すシステムで、パソコンやスマートフォンを通じて誰でも利用できる。調査では有効回答4224人の37・2%が就活で活用したことがあると答えた。割合だけで見れば前年調査(18・4%)の約2倍に達した。 用途(複数回答)もさまざまで、利用経験者のうち多い順にESの推敲(添削など)56・6%▽ESの作成41・7%▽自己分析28・8%▽業界研究25・2%▽面接対策17・8%-など。 活用理由(同)はアウトプット(発信内容)の改善57・3%▽作業時間の短縮53・9%▽より良いアウトプットが出せる36・3%▽作業ミスを減らす25・5%▽自力で出したアウトプットよりも精度や質が高い12・2%-などとなった。 ◆「本来の自分」表現を マイナビによると、企業側は学生が生成AIを使うことをおおむね受け入れつつある。東芝の担当者は「AIをうまく取り込み、学生自身の不得意な領域を補強することが可能であれば、それはビジネスにも通じる」と前向きだ。通信教育大手の担当者も「生成AIで情報収集などを効率化し、志望動機の作成など時間を使うべきところに力を注ぐのは良いと思う」と話す。 一方、生成AIが作成をサポートした自己PRの内容が、学生本来の姿から乖離(かいり)する恐れがあるといった懸念も根強い。ローソンの担当者は「AIを使わずに自分本来の適性や資質を表現してほしい」と語った。
調査に携わったマイナビキャリアリサーチラボの中島英里香研究員は「生成AIの利用は今後も増えるだろう。ただ、学生側も内定を得ることがゴールではないので、生成AIにゼロから頼るのでなく、補助的なツールとして使うべきだ」と注意を促している。(福田涼太郎)