「なぜ当初から盛り込まないのか」神宮外苑再開発、伐採減報告も残るわだかまり
新たな樹木保全策に基づく工事内容の変更届が21日、東京都の環境影響評価審議会に報告されたことで、明治神宮外苑再開発は大きく前進することになる。ただ、都側の要請を受けた樹木保全策の大幅改善に対しては「なぜ当初計画の段階で盛り込めなかったのか」といった批判があるのも事実。関係者に積もった不信感を払拭することが事業者側にとって今後の課題といえる。 【比較してみる】神宮外苑再開発、着工前と再開発後の変化 「原案がいかに悪かったのか」「合意形成への熱意が足りない」 9月28日、明治神宮外苑至近のホテルで三井不動産などの事業者側が行った地域住民向けの説明会で出た参加者の声だ。 繰り返された保全策の変更に対し、一部参加者は事業者側への不信感をあらわにした。事業者側は「当初の計画に自信を持っている。(明治神宮の)の成り立ちも理解して原案を作った」と強調したものの、説得力は乏しかった。 そもそも事業者側は樹木の伐採を昨年9月中にも始める予定だった。だが反対の声は強く、国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)が計画撤回を求めるヘリテージ・アラートを発出。直後、都が保全策を示すよう事業者に通知した。さらに今夏の都知事選では争点に浮上するに至った。 こうした経緯を振り返り都幹部は「事業者の見込みが甘かったのではないか。どんな都市計画にも反対意見が出るとはいえ、もっと丁寧な対応ができたはずだ」と指摘する。事業者側へのわだかまりは今も残る。 再開発には神宮球場など既存施設の老朽化対策だけでなく、神宮内苑を支えてきた外苑の収益事業の安定化という目的がある。広く親しまれてきた都心の風景を変える一大事業。この日の審議会でも専門家から自然に配慮するよう多くの注文が出た。事業者側は関係者の意見に耳を傾け、より丁寧に事業を進める必要がある。(大泉晋之助)