日本人の6人に1人が運動不足で死んでいる…東大名誉教授が教える「週にたった2回」で寿命が伸びる行動
健康長寿を目指すうえで大事なことは何か。がん細胞の研究を専門とする東大名誉教授の黒木登志夫さんは「健康に自信があったり、病院が嫌いという人も少なくない。しかし、重大な病気は音もなく忍び寄ってくる。現代医学を信用して、毎年の健康診断をきちんと受けてほしい」という――。(第1回) 【図表】主な死因のべき乗則指数 ※本稿は、黒木登志夫『死ぬということ』(中公新書)の一部を再編集したものです。 ■長生きしたいなら毎年の健康診断を欠かしてはいけない 健康診断が嫌いな人、病院に行くのも薬を飲むのも嫌いな人がいる。その気持ちもわからないではないし、病院好き、薬好きになってほしいというわけではないが、現代医学を信用して、健康と治療のために気軽に病院に行ってほしい。何よりも自分のためである。医者嫌い、薬嫌いのために倒れた人が何人もいるのだ。 医者嫌い、薬嫌いの人に限って、怪しげなネット情報に引っかかりやすい。ワクチンを拒否しエビデンスのない治療法、あるいは治療法もどきを安易に信じてしまう。 病気は音もなく忍び寄ってくる。がん、心臓病、糖尿病、認知症、命に関わる病気は、本人も周りの人も気がつかないうちに、身体のなかで芽生え、少しずつ本性を現してくる。早いうちに早いうちに、病気の芽をつまみ出すことが大切だ。それには、健康に自信があろうとなかろうと、毎年、定期的に健診を受けることが大事である。その根拠はグラフ上の1本の直線にある。 ■やがて死に至る病気は年齢に比例して発生しやすくなる ほとんどの病気は年齢とともに急速に増えてくる。図表1に、そのひとつの例として日本人の膵臓(すいぞう)がんの年齢別死亡率を示した。普通の目盛りで書くと、図表1-Aのカーブになる。これを直線化するのにはどうしたらよいだろうか。まず、縦軸(年齢別死亡率)を対数に変換してみたが、直線とは言いがたい(図表1-B)。 次に、横軸の年齢も対数に変換したところ、直線が得られた(図表1-C)。つまり、死亡と年齢の両方の対数値の間には直線関係が成立することになる。これを数学的には、べき乗則という。 出典=黒木登志夫『死ぬということ』(中公新書) 「べき乗則」(Power Law)は、多くの人にとって、耳慣れない言葉であろう。「べき乗」を漢字で書くと「冪乗」になる。ますますわからない。「累乗」と言えば、少しはわかりやすいであろう。つまり、同じ数を重ねて乗ずることである。 「べき乗則」は、驚くほどたくさんの自然現象、社会現象に当てはまる。がん、心筋梗塞、脳梗塞の年齢別死亡率だけではない。研究費から見た大学間格差、地震のマグニチュード分布、月のクレーターの直径分布、シェイクスピアの単語の使い方分布などなど、「べき乗則」は自然と社会現象を解くカギともいえる。