「救急車呼んだら7700円」は誤解だらけ 市の担当者は「入院しなかったら一律で徴収するわけではない」と困惑
■不適切利用の抑止にはつながる さらには救急車をタクシー代わりにするなどの不適切な利用が全国的に相次いでおり、逼迫に拍車をかけている。松阪市も7700円の徴収により不急の119番通報や、不適切な救急車の利用を抑止したい考えだ。 では、専門家は今回の一件をどうみるのか。 救急医療に長く携わった国士舘大学防災・救急救助総合研究所の島崎修次所長は、今回のような市民の誤解を防ぐため、国は選定医療費についてホームページなどで説明しているものの、さらなる積極的な周知が必要としたうえで、こう話す。 「救急車の出動件数は全国で760万件(23年、総務省消防庁調べ)に達し、増加の一途をたどっています。医療現場は限界に来ており、軽症患者など救急車を呼ぶ必要のない人の利用をどう減らすかは喫緊の課題です。松阪市が7700円を徴収すると公にしたことで、少なくとも誰の目にも明らかな救急車の不適切利用への抑止にはつながるでしょうから、私は徴収の判断を評価します。7700円を取られるとわかっていて、タクシー代わりに使おうと思う人はいないでしょうからね」 話し相手が欲しくて救急車を呼んだ高齢者。症状は特にないのに、何十回と繰り返し救急車を呼ぶ「リピーター」。目的地への送迎に救急車を利用しようと119番通報し、近所に気づかれたくないからとサイレンを鳴らさずに来るように条件をつけてきた乗客気取りの人。島崎さん自身、救急医療の現場であぜんとする事例をたくさん見聞きしてきた。
■救急車を呼ぶか否かの判断は? 「救急車の現場に到着するまでの時間も以前より長くなってきています。本当に救急車が必要な人のもとへの到着が遅れ、病院に搬送するのが遅くなってしまう。自分や、自分の身内になにかあったとき、救急車がなかなか来なかったらどう思うのか。徴収に抵抗感を抱く方もいらっしゃるでしょうが、わが身にも降りかかりかねない話だと、想像を巡らせてほしいと思います」(島崎さん) 救急車を呼ぶか否か。いざというときに一般人が判断するのは非常に難しい。松阪市の担当者は「必要だと思ったら、ためらいなく呼んでください」と強調する。 一方で私たちができることもある。緊急時に備え、かかりつけ医との関係をどう作っておくか。急な病気やけがで救急車を呼ぶか迷ったときの電話相談窓口「♯7119」などを利用してほしいと、島崎さんも呼びかける。医療を受ける側も、あらかじめ備えを考えておくことが大切だ。 (國府田英之)
國府田英之