あのちゃんが声優初挑戦でみせた表現力。“過去の壮絶体験”とリンクするようなシーンも
2024年3月22日よりアニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編』が劇場公開中だ。大きな注目ポイントは、主人公の女の子2人の声のボイスキャストおよび主題歌を、幾田りらと「あの」という、どちらも紅白歌合戦にも出場した超人気歌手が担当していることだ。 【画像】あのちゃんが演じたキャラクター 幾田りらは『竜とそばかすの姫』での声の演技も高い評価を得ていたが、あのは今回が声優初挑戦。あのは個性的なキャラクターをしていることもあり、そのキャスティングや演技に不安を覚えている人もいるかもしれない。 しかし、実際に映画作品を見ると、その不安が消し飛ぶのは間違いない。原作漫画の作者・浅野いにおが完成披露試写会で「オーディションでのあのちゃんのテストで現場の雰囲気が一変した」と語っていたことに納得できる、他の本業声優たちとなんら遜色がない神がかり的な表現力を見せていたのだ。 さらには、今回の劇中の役は、(もちろん偶然ではあるのだろうが)あのという本人のキャラクター、あのが現実で経験した過去の出来事にもリンクしているように思えた。その理由を記していこう。 ※以下、物語上の重要な場面の描写を避けつつ、一部内容に触れています。
本人のキャラクターと見事にシンクロする役柄
あのの何よりの特徴は、短絡的な言い方だが「不思議ちゃん」であることだろう。一度見れば忘れられないルックスや声はもとより、「いい意味でちょっとズレているようで」「言葉のチョイスや語り口が絶妙で」「裏表なく本音を話しているようで共感できる」トースキルを持ち合わせている。「作った」ような不思議ちゃんではまったくなく、自然体で唯一無二のキャラクターであり続けることで、若者から絶大な支持を集めたことが納得できる。 そのキャラクターがさらに注目を集めたのは、『水曜日のダウンタウン』の2021年の企画。『ラヴィット』に出演中のあのは、じつは人気芸人たちから「遠隔操作」されて大喜利に答えている。、その答えの独特のセンスや上手さに、司会の麒麟・川島明が感心したり引いてしまう様が大きく話題になっていたりもした。 そんなあののキャラクターは、今回の『デデデデ 前章』の主人公の1人、中川凰蘭(おうらん)という女の子の性格と絶妙にシンクロしている。映画冒頭から「手も足も出ないならおっぱい出せ」と言ったり、口ぐせ(?)が「はにゃにゃフワ~~~ッ」だったり、言動それぞれがストレートに不思議ちゃんなのだから。さらには、その一人称が「ぼく」であることも、くしくも“ぼくっ子”であるあのと一致していた。 しかし、この凰蘭はただ変な子というだけでなく、友達思いの良い子でもある。とてつもなく悲しい事実を知り、無理にでも明るく振る舞おうとしている場面もあって、ついには抑えられずに感情を荒げてしまったりもする。その時の演技に感動があるのは、バラエティ番組などでのトークで培われた(はたまたもともと持っていた)「共感を呼ぶ力」があるからではないか。