シリーズ「こどものミライ」離婚後の「共同親権」導入へ 福岡でもさまざまな声
FBS福岡放送
シリーズでお伝えしている「こどものミライ」です。今回は、両親が離婚した場合の子どもたちについて考えます。 未成年の子どもが成人になるまで世話や教育、財産の管理などを行う親の権利や義務を「親権」と呼びます。現行の法律では、両親が離婚した際には片方の親だけが子どもの親権を持つ「単独親権」となっています。 現在、国会では両親の協議によって「単独親権」に加え、離婚後も両親に親権を認める「共同親権」を選択することが可能となる改正案の審議が行われています。この「共同親権」については、福岡でもさまざまな声があります。 福岡県内に住む上原直樹さん。6年前、当時の妻と2人の子どもは突然この家を出ていき、その後、離婚が成立し親権を失いました。この家に残された子どもたちとの思い出は今もそのままです。 ■上原直樹さん(37) 「やっぱりその時のまんま残しておいてあげたいっていうのがあったので。自分も親権を失いたくなかった。もう何が何でも親権がやっぱり欲しかったですね。」 離婚後に親権を持つ1人の親を決めなければならない現行の法律では、親権をめぐり父親と母親の間で溝が深まり、親子の交流が途絶えてしまうケースは少なくありません。 ■上原さん 「私たちは今現在、自分の子どもに自由に会うことができなくなった親です。」 上原さんは3年前から、離婚後も両親が親権を持つことができる「共同親権」の導入を求めて、子どもとの関係が途絶えた親たちとともに九州各地の街頭で活動を続けてきました。 そんな中、国会で審議が行われているのが民法などの改正案です。子どもの利益を確保するとして離婚後に「共同親権」を選択できるようにすることを柱としていて16日、衆議院の本会議で賛成多数で可決されました。 上原さんは法律が改正されれば、両親が離婚した子どもたちが同居する親だけでなく、別居となった親にも自由に会いやすくなると考えています。 ■上原さん 「やっぱり子どもたちにとっては、たった1人のお父さんとたった1人のお母さんですよね。世界でたった2人しかいない親子関係を、やっぱり保証してあげるべきだと思います。いろんな考えの人がいるからこそ、やっぱり子どもたちのこと、子どもの権利をしっかり守っていく法律が必要じゃないかなと思います。」 その一方で「元夫からは暴力を受けてきた。また支配が続くことになる」「子どものことで話し合ったり、協力をすることはもう難しい」など、共同親権の導入に不安を覚え廃案を求める声もあります。 改正案では、父母の話し合いで「親権」が決まらない場合、家庭裁判所が「共同」か「単独」かを判断するとしています。 福岡県弁護士会は3月、「十分に審議を尽くすべき」との声明を出し、共同親権の導入に慎重な立場を示しました。 ■福岡県弁護士会・石田淳弁護士 「家庭裁判所の役割がとても重要になってくるんですが、すぐにそういう体制が整うかということも非常に不安があります。共同親権の導入というのは慎重に行っていただきたい。」 改正案では、DVや虐待などで子どもの心身への悪影響が懸念される場合は単独親権にするとしています。 ■石田弁護士 「夫婦間で暴力がある事案とか、親子間に虐待があるような事案で仕方なく、本当は嫌なんだけど仕方なく共同親権を受け入れてしまったというようなケースの時に、結局、暴力や虐待が続いて、子どもに不利益が続いてしまうという可能性もあるんです。」 厚生労働省によりますと、おととしまでの5年間で両親の離婚を経験した子どもたちは全国で95万人あまりにのぼります。 福岡市に住む30代の田中さんは6歳の時に両親の離婚を経験しました。以来20年以上、母親とは会えない日々が続きました。 ■田中さん(仮名) 「悲しかったですね。率直に。父方に引き取られたのですが、やっぱり母親に会えなくなるっていうのが、お母さん子だった私からしたら、そのときは本当に悲しかったです。お母さんのことは会話に出しちゃいけないのかなってずっと思っていたので。」 自身の結婚を機に母親を探し、再会を果たすことができた田中さんは、共同親権の導入に賛成しています。 ■田中さん(仮名) 「難しい人には難しいですよね、単独親権で会うとなったら。今まで抱えていた母親に会いたいなという思いも(共同親権では)抱えずに済んだかなって思うし、ちっちゃかった頃の自分は悲しまないで済むんじゃないかなって思います。」