香港コンサート市場における最新動向 現地プロモーターに聞く、J-POPアーティストの強みと課題
香港で盛り上がるJ-POP さらなる成功に向けて求められるものは?
香港の興行市場について、コロナ禍前と後では日本人アーティストの公演数が数倍に増加しているとフィリップ氏は述べている。コロナ禍、香港でも配信ライブが行われたが、やはり会場で観る生のパフォーマンスを香港の人々が渇望しているという。日本の音楽ジャンルでは、かつてはJ-ROCKなどバンドの音楽に人気が偏っていたが、現在ではアニソンが最も人気が高いとのことで、これは他の海外と同じ傾向のようだ。一方で乃木坂46のように、アニソン以外のアーティストが訪港して興行が大盛況となっているのも事実である。また25年越しで初訪港した宇多田ヒカルのようなアーティストの場合、デビュー当時を懐かしむという意味で、香港の往年のファンに待ち望まれた公演だったと述べている。 K-POPとJ-POPの比較では、K-POPアーティストはレッスン、ダンス振付、MV、SNSと豊富な予算で臨み、グローバル市場で回収するというスキームが上手く成立しているのが強みだという。そして、J-POPアーティストでは独自のジャンルやスタイルが確立されており、グッズひとつにもスタイリッシュさを感じるという。一方で、J-POPアーティストはアジアだけでなく欧米市場にも進出すればいいのに、強いこだわりがネックになっているのではとフィリップ氏は指摘した。フィリップ氏から日本のアーティストはovermindだという言葉が取材中に頻発したが、彼の指摘には日本チームがこだわる渡航人数や持ち込み機材の物量も含まれているのだと感じた。 欧米のバンドでは、自国で一定の人気を得た後でも、海外のツアーでバンドとツアーマネジャーだけで周遊するケースも少なくない。そういった点で日本のチームには海外進出の際、渡航人数や物量面である程度の融通性が必要なのかもしれない。 最後に彼に「日本人アーティストが香港で成功するために必要なものは何か」と尋ねたら、パッションという回答が出た。9年ぶりの香港でLOVE PSYCHEDELICOのワンマン公演を観に来たオーディエンスは、待ってましたとばかりの反応だった。楽曲への反応も去ることながら、NAOKIの英語のMCに頷きながら熱いコール&レスポンスを送っていた。来年でデビュー25周年のLOVE PSYCHEDELICO。2,000人の香港ファンには、音楽をひたすら続けるパッションが大切だというNAOKIの真摯な想いが伝わったのではないかと感じた瞬間であった。
関根直樹