「福島の教訓は風化していないか」…脱炭素社会の実現旗印に原発回帰進むエネルギー政策 増え続ける電力需要の中で、再エネ導入にも課題山積
その一方で、使用済み燃料の処理問題は解決に程遠い。1993年に着工した日本原燃の再処理工場(青森県)は8月に27回目の完成延期を表明したばかり。高レベル放射性廃棄物の最終処分地は定まらないままとなっている。 ■ ■ ■ 現行エネ計画で「主力電源化を徹底」とした再生可能エネルギーの導入も一筋縄にいかない。30年度の電源構成比で36~38%を掲げるものの、22年度は22%だった。原子力政策に詳しい明治大学の勝田忠広教授(56)=鹿児島市出身=は「原発が再稼働しようという時に、再エネに参入するのは業者にとってリスクでしかない」と指摘する。 県内の現場では課題も噴出する。3月、伊佐市の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)で起きた火災では、感電や爆発を防ぐため消防が放水できなかった。各地で計画が進む風力発電は、環境への影響を懸念する声が絶えない。 それでも、勝田教授は「低成長時代には再エネの方が電気をつくりすぎる心配は少ない」とメリットを挙げる。南日本新聞が4月に実施した県民意識調査では、川内原発の運転延長に賛成する人の理由は「再エネが普及するまで必要」が最も多い3割超を占めた。
南日本新聞 | 鹿児島