「マスクの野望」実現に向けた大きな一歩

スターシップの打ち上げシステムは、世界初の完全再利用可能なロケットになるよう設計されている。つまり、ブースターと宇宙船の両方が地球に帰還し、再び使用できるようにすることを目指しているのだ。 その達成に向けた最終段階のステップのひとつが、今回のスーパーヘビーの着陸だった。 再利用によるコスト削減は、仮説にとどまるものではない。スペースXの「ファルコン9ブースター」が、それをすでに証明しており、1回の飛行で約6700万ドル（約10億円）、ペイロード（積載物）1ポンド（約454グラム）あたり約1500ドル（約22万円）という安価で迅速に打ち上げることができる。 これに対し、スペースシャトルはペイロード1ポンドあたり約2万5000ドル（約370万円）の費用がかかっていた。 マスクは以前、スターシップの打ち上げコストを1回あたり約1000万ドル（約15億円）に引き下げることを目指していると述べていた。大幅なコスト削減により、小惑星採掘や宇宙工場といった未来の宇宙産業への扉が開かれる可能性がある。最終的には、マスクが目指す「100万人規模の火星コロニー」を実現するための道を切り開くことになるかもしれない。 このマスクの夢を叶えるための乗り物がスターシップだ。 「他の惑星に生命を拡張する可能性を持つロケットはこれまでなかった」と、マスクは4月に述べていた。彼が2002年にスペースXを設立したのは、まさにこの目的を果たすためだった。そう考えていたのはマスクだけではない。 マサチューセッツ工科大学（MIT）の航空学、宇宙工学、エンジニアリングの教授であるオリビエ・ド・ウェック（Olivier de Weck）は以前、「スターシップが人類を月や火星に運ぶようになることはほぼ間違いない」とBusiness Insiderに語っていた。 「これは単なるクールなロケットプロジェクトではなく、文字通り人類の運命を変える可能性を秘めている」