法人税引き下げって効果あるの?/木暮太一のやさしいニュース解説
安倍首相が法人税の実効税率の引き下げを検討するように指示したようです。 日本の法人税は、実質的に35.64%(復興特別法人税を含めて38.01%)で、他の先進国と比べて「高い!」と考えられています。そのため、産業界からは「そのせいで企業が競争力を失っている」「これが、企業が海外に拠点を移してしまう原因」と指摘されていました。 ―――「でも、その状況は前から同じだよね? なんで今、引き下げ検討するの?」
オバマ米大統領に「追随」
きっかけとしては、アメリカのオバマ大統領が税率引き下げの考えを打ち出したことです。オバマさんがその考えを発表したのが先月30日ですから、2週間も立たずして、日本も「追随」していることになりますね。 世界の法人実効税率は20%台が主流で、先進国の中では、日本とアメリカが「法人税が高い!」とされています。たしかにドイツ29.55%、中国25%、韓国24.2%と比べると高いですね。日本も「アメリカも法人税が高い」と言って、“法人税を下げろ圧力”をはねつけてきました。ですが、ここでアメリカが引き下げを検討してしまったら、日本が頭ひとつ出てしまいます。だから急いで「引き下げ検討」をしているのです。 ―――「でも、他が下げてるから、日本も下げろといのは、正しいのかな?」 そのとおりですね。 他国が下げているから日本も下げるべきというのは論理的ではありません。ただ、ひとつ考えなければいけないのは、「企業は税金(法人税)が安い国に移動してしまう」ということです。つまり、日本から出て行ってしまうのです。 企業が出て行けば、そこにあった雇用がなくなります。オフィスや工場が外国に移ってしまうと、全員とは言わないまでも、失業する人が出てきます。それは日本国民にとってマイナスで、大きな問題です。 ―――「でもなぁ、だからといって企業ばっかり優遇するのは、賛成できないなぁ」 法人税を下げると、「企業優遇の政策」と受け取られがちです。たしかに、企業は支払う税金が少なくて済みますのでうれしいでしょう。 ただ、ポイントは、その払わずに済んだ税金が、どこに向かっているか、ですね。税金が高ければ、その分、人を雇うのを諦めなければいけませんし、新たな設備投資もできなくなります。法人税を下げることで、雇用が増え、設備投資が増え、新たなビジネスが興って景気が良くなれば、結局日本国民全体が恩恵を受けるようになります。 ―――「じゃあ、法人税下げたほうがいいってことかな」 さらに政府は、法人税を下げることで、海外から企業を誘致しようという思惑もあるようです。法人税が安い国に企業が集まるのであれば、日本も法人税を下げて、企業を呼び込もうという考えです。アベノミクスの「成長戦略」とも結びつけて考える人もいるようです。