Tiny Desk Concert、グラミー賞でも話題のエスペランサ “ブラジルの声”ミルトン・ナシメントについて語る
■「南無妙法蓮華経」を取り入れた楽曲も エスペランサが書き下ろした「Wings for the Thought Bird」には、〈南無妙法蓮華経〉というお題目が取り入れられている。軽やかな解放感を感じさせてくれるこの曲には、ミルトンとウェイン・ショーターの交流も反映されているという。 「〈南無妙法蓮華経〉とチャント(詠唱)することは、自分のなかに溜まった辛さや思考に翼を与えて飛び立たせてくれる。唱えることで自由になれる感覚を、この曲にも入れたいと思ったんですよね。レコーディングのときにミルトンが話してくれたんですが、ウェインとミルトンが最後に会ったとき、お互いの車の窓を開けて〈南無妙法蓮華経〉って言い合ったそうなんです。ウェインとのつながりは『ミルトン+エスペランサ』のテーマの一つだし、彼の奥さんのキャロライナもコーラスで参加しているんですよ」 ブラジル音楽に向けられたエスペランサへの思いは、ブラジルの歴史や環境への問題意識にもつながっている。 昨年10月には、ブラジル先住民族の領有権を制限する法案の否決を受けて書き下ろした「Nao Ao Marco Temporal」を発表。この法案は、ブラジル先住民族を強制排除の脅威にさらし、熱帯雨林を危機に陥れるものと危惧されている。エスペランサはこの問題に対する認識を高め、先祖伝来の土地を守るために闘い続けるブラジルの先住民族コミュニティを支援するよう、世界中の人々に呼びかけるためにこの曲をレコーディングしたという。ミルトンも積極的に社会的なメッセージを発信してきたが、彼女もその影響を受けているのだろうか? 「確かにミルトンは言いたいことをどんどん言ってしまう人で、ブラジルが軍事政権下にあったときは、身の安全のために国を出なくてはいけないこともあった。私が『Nao Ao Marco Temporal』を発表しても身に危険が及ぶわけではないし、ミルトンのことを意識したり、影響を受けてこの曲を書いたわけではないんですよね。それよりもアルバムの制作のためにブラジルを訪れ、現地の状況を深く知るにつれて、アマゾンの問題も身に迫って感じるようになったことが大きいかも。