国産ソフトメーカーが「買い切り型」でAI機能を展開、セキュリティ重視で法人需要を開拓へ
オフライン処理のため、Google翻訳のような瞬時の処理とは異なり、1000文字程度の文章で10秒程度の処理時間を要する。一方で「テキスト処理なので通常のCPUでも十分なパフォーマンスが出せる」(製品企画担当の松井久典氏)という。将来的にはAIパソコンの専用チップ(NPU)による高速化も視野に入れるが、現時点では一般のPCでの利用を優先した。 機密性の高い契約書や技術文書の翻訳、飛行機や地下鉄内での移動中の作業、通信制限のある医療機関での利用など、オンライン翻訳が使えないケースでの需要を見込む。
法人向けライセンス版は今月中に発売予定。現時点では日英翻訳のみの対応だが、将来的な多言語対応も視野に入れているという。画像処理など他のAI機能の開発も並行して進めている。 ■一太郎40周年で文字起こし機能を標準搭載 ジャストシステムは2月7日、文書作成ソフト「一太郎2025」を発売する。40周年となる今回の大きな特徴は、クラウドAIを活用した文字起こし機能を標準搭載した点だ。買い切りソフトながら、音声ファイルや動画の音声をリアルタイムで文書に変換する機能を実装し、これらの機能を制限なく利用できる。
音声からの文字起こしでは、会議や講演、取材やインタビューなどの音声データを直接一太郎文書に入力可能。再生中の一時停止や5秒単位での巻き戻し・早送りに対応し、誤変換箇所の修正も容易に行える。Windows 11環境での利用となるが、これまで手作業で行っていた議事録作成などの文字起こし作業を大幅に効率化できる。 画像文字認識(OCR)の機能も搭載する。手書きメモや紙資料をカメラで撮影するだけで文字データ化できるようになり、目視での入力作業が不要となり、紙文書のデジタル化作業の時間短縮が期待できる。
このほか、主要な小説投稿サイト8サイトの記法ルールに対応し、「カクヨム」「エブリスタ」「アルファポリス」などの投稿用テキストを一太郎で作成可能に。ふりがなや傍点などの表記ルールを反映できる機能は、多くの創作ユーザーを抱える同社ならではの特徴だ。 日本語入力システム「ATOK」も大幅に進化した。文脈に応じて変換強度を学習する新エンジン「ATOKハイパーハイブリッドエンジン2」を導入し、一時的な入力と普段使いの変換を適切に区別。新サービス「ATOKわたしの辞書プラス」では、建築・土木、IT、医療など5つの専門分野の用語辞書を提供するほか、47都道府県の地域語彙にも対応。2025年夏以降は対応ジャンルを拡充予定だ。
一太郎2025の価格は、通常版が2万7500円(税込み)。40周年記念のプラチナ版は4万7300円で、モリサワなど有名フォントメーカー5社の記念フォントパックを同梱する。ATOK Passportユーザー向けの優待版は4950円から提供される。 パッケージソフトへのAI機能搭載において、両社は異なるアプローチを採用した。ソースネクストはオフライン処理でセキュリティを重視し、Google翻訳級の精度を実現した。ジャストシステムはクラウドAIを活用し高度な文字起こし機能を実装している。どちらも月額課金が主流のAI機能を買い切り型で提供することで、ユーザー企業に新たな導入形態を提案している。
石井 徹 :モバイル・ITライター