率直に問う 「フェリー業界」に未来はあるのか? 観光客6000万人時代に考える、「島国日本」の永続的フェリー戦略とは
国内フェリーが担う地域経済への影響と貢献
四方を海に囲まれた日本にとって、フェリーはなくてはならない交通手段だ。現在、インバウンドによる海外からの旅客需要や「2024年問題」による貨物需要の増加が見込まれている。一方で、少子高齢化による人手不足、定期旅客数の減少など逆風も吹いている。そこで、本連載はフェリー事業の現状と将来展望、その重要性について記す。 【画像】えっ…! これが海運大手の「年収」です(計11枚) ※ ※ ※ 四方を海に囲まれている日本にとって、フェリーは欠かすことのできない交通手段である。今日では、インバウンドによる海外からの旅客需要や「2024年問題」などにより貨物需要が期待できる反面、少子高齢化による労働力不足や定期旅客の減少という逆風も吹き荒れている。今回は、短期連載「最終回」として国内フェリーの課題と展望について話をする。 ・中長距離フェリー:幹線道路のバイパス機能 ・近距離フェリー:2地点間の短絡機能 ・離島航路:生活路線機能 として、距離の長短にかかわらず、自動車も人も同時に運べるフェリーは重要な役割を担っていることがわかった。 また、中長距離フェリーは、旅客設備やサービスの向上に力を入れてきた結果として、 「フェリーそのものが旅行目的」 となるくらい豪華になってきた。近距離や離島航路も、インバウンドの拡大にともない、ゆったりとした時間が流れるスロートラベルの担い手となる可能性を秘めている。 さらには、物流や観光面での貢献だけでなく、災害時には救援車両や支援物資の輸送手段としてフェリーは活躍してきたのだ。 海に囲まれた島国だからこそ、海沿いや島で生活する人々だけでなく、日本で生活するほとんどの人が何かしらの形でフェリーの恩恵を受けているのではないだろうか。
国内フェリー産業が直面する課題と問題点
フェリー事業は、 ・輸送量(貨物・旅客) ・燃料などのオペレーションコスト ・船舶更新 ・船舶従事者の確保 といった課題に向き合いながら、航路を維持してきた。さらに、中長距離航路にかぎっていえば、“高速道路の値下げ”と戦ってきた経緯がある。 「中長距離フェリーのライバルは高速道路」 といっても過言ではない。国土交通省の資料によると、高速道路の値下げによって全体の物流量は増えず、単純に 「フェリーから高速道路にシフトしただけ」 という。例えば、本州~四国間ではフェリーのトラック輸送量が約10万台減少し、その分だけ本州四国高速道路が増えた。もちろん、自家用車での移動も盛んとなり、フェリーだけでなく鉄道や航空機といった他の公共交通の利用者も減少したのはいうまでもない。 一方で、フェリーの建造費用は数十億円から100億円超と1隻あたりの単価が高く、かつ十数年から20年と寿命が短いため、フェリー航路の持続に向けて安定した経営環境の形成が不可欠といっていい。 国や自治体によるオペレーションコストや船舶更新のバックアップは欠かせないが、フェリー・高速道路・鉄道・航空機を俯瞰(ふかん)したなかで、バランスのとれた輸送モードの維持も必要だろう。