Googleの「約束破り」が示す検索市場の“危うさ” ヤフーへの技術提供制限で公取委がメス
そもそもヤフーはなぜ、ライバルであるグーグルから技術提供を受けてきたのか。 日本のヤフーは1996年、ソフトバンクグループとアメリカのヤフーの合弁として設立された。当初は検索エンジンと検索連動型広告の技術も、アメリカのヤフーから提供を受けていた。 しかし2009年にアメリカのヤフーは、同技術の開発をやめてマイクロソフトから技術を受け入れる方針を決定。日本のヤフーもマイクロソフトからの技術提供を検討したが、これまで使用してきた技術に劣ると判断し、市場でもっとも優れた検索エンジンなどを提供しているとみたグーグルへの切り替えに至った。
ヤフーの切り替えによって、グーグルの国内における検索エンジンなどの技術シェアは約90%に高まることから、両社は提携に先立ち公取委へ相談。検索連動型広告配信業者としての事業運営をそれぞれが独自に行い、広告主やその入札価格などの情報を完全に分離して保持するなど、今後も競争関係を維持するという説明を受け、公取委は独禁法上の問題にはならないと判断した。 ■「競争維持」の約束破り、報告もせず ところが前述の通り、この「競争関係を維持する」という約束は、たった4年で反故にされた。
公取委は2010年の相談後も複数回のフォローアップ調査を行ったというが、その中でグーグルから契約変更についての報告はなかった。公取委がデジタル分野での情報収集を進める過程で今回の問題が発覚。独禁法違反の有無について審査が始まったことを受け、グーグルからヤフーへの技術提供は再開されたという。 グーグルは提出した計画において、今後3年間にわたってヤフーへの当該技術の提供を制限せず、独自性と情報分離の確保に向けた手段を講じると説明。さらに、公取委による確約手続きの事案として初となる、定期的な外部専門家の監査も実施される。
「現在、デジタル分野については日本のみならず、いずれの(国の)競争当局も関心を持っているところだ。われわれも引き続き関心を持って対処していきたい」(公取委の中島氏)。 今回の行政処分で浮き彫りとなったのは、広告の一大ジャンルである検索連動型広告の危うい市場構造だ。 電通グループの「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によれば、2023年の日本におけるインターネット広告費は3兆3330億円と過去最高を更新。その中でも検索連動型広告は1兆0729億円と、動画広告などをしのぐ最大のジャンルだ。