タックスマンばかりでない 財務省の「立会官」 被災インフラの早期復旧へ費用を適正査定
2人は発災から1年が経過した能登半島地震でも応援で夏以降に現地入り。特に渡辺さんは実地査定として、奥能登の各市町で被災した数多くの道路や河川、下水道施設をつぶさに見て回った。
■慢性的な人手不足
後進の育成が急務となっているのも近年、災害が頻繁に発生し、規模や範囲も大きくなっているからだ。中国財務局では、立会官として従事できる主計実地監査官は約20人。国難レベルの災害が起これば、全国から人をかき集めても慢性的にマンパワーは不足する。
地域の復旧の足かせになりかねず、各財務局は有事に備えた内部研修を充実させるなど対策を急ぐ。技術職の査定官と渡り合うには、相応の知識や経験が求められる。この道20年以上の渡辺さんは「迅速な査定には、場数が物を言う」と話す。(矢田幸己)
能登半島地震を受け、北陸財務局が実施した「災害査定立会」は昨年9月末時点の速報ベースで、石川県で5223カ所だった。管内で被害申告件数は2万件以上に上っただけでなく、豪雨災害も重なり「正確なカ所数や事業費は現時点で提示できない」(同財務局の担当者)という。
災害査定立会制度 昭和25年に四国や近畿、北陸などを襲った「ジェーン台風」による被害を装い、石川県内を流れる手取川に架かる橋を、県庁幹部が業者に指示して崩壊させ、国費を詐取しようとした「天狗橋事件」が発生。翌年10月、「査定の厳正公平を期するために(中略)必ず大蔵省の係官を立会せしめること」と閣議決定された。