宅配寿司のバイトに授業、練習、ミーティング…… 「アイシールド21」で始まったアメフト人生、7年目の集大成を
試合に出たくて始めたスナッパー
フットボールでは新たな挑戦をしていた。とにかく試合に出たくて、2年生になるとスナッパーの練習を始めた。フィールドゴールやパントの際に後方へボールを送るスペシャリストだ。2年の春シーズンに1本目のスナッパーの先輩が試合中に負傷し、出番が来た。3回投げて2回が「ホームラン」。大暴投だ。「これはヤバすぎると思って、アフター練習で必死にやりました。秋にはしっかり出せるようになって、3年からは一人前という感じで。1年かかりましたね」と懐かしそうに笑う。 DBとしては2年の秋からスターターの座をつかんだ。私生活だけでなく試合中も忙しい。ディフェンスの出番が終わってベンチに戻っても、オフェンスの進み方次第でいつスナッパーとしての出番が来るか分からない。しかも今年はディフェンスリーダーだから、次のディフェンスに向けての修正点をまとめる役割もある。「短い時間で、しかもみんなが理解しやすくて、すぐに覚えられる感じで伝えるのを意識しています。『○○をこうしよう』ってパッと伝えて。『じゃあ行ってくるから、何か決まったらフィールド内で教えて』って」。試合中、神戸大の24番に注目していると面白い。
相手の傾向が分かったとき「別の楽しさに触れた」
近年のレイバンズは学生主体の取り組みを続けている。とくに今年のディフェンスは、ほとんど学生に任せられている。「やりたいようにやらせてもらって、すごく面白かった。4年生で話し合って作戦をつくって、監督の矢野川さんにアドバイスをもらいます。自分たちでビデオを何十回も見て相手の癖が分かったり、プレーの傾向を探り当てたりしたときは、何かフットボールの別の楽しさに触れた気がしました」。これも学生スポーツの醍醐味(だいごみ)の一つだろう。 矢野川源監督は畔柳について、「精神的支柱ですね。考え方もしっかりしてますし、大人ですし、頭もいいので。彼なら任せて大丈夫という存在です」と絶賛する。来春には鉄鋼商社への就職が決まっている。就活のころはフットボールを続けるかどうか迷っていたが、この秋のシーズンが進んでいくうちに、気持ちが決まった。「やっぱりフットボールは楽しい。プレーだけじゃなく、深く関わっていくことでさらに楽しくなりました。ご縁があれば、X1SUPERのチームで続けたいです」 神戸へ送り出してくれた母は、去年まではまったく観戦に来なかった。だけどラストシーズンはここまで全試合に東京から駆けつけてくれている。「頑張ろうと思えるというか、すごくありがたいと思ってます」。リーグ最終戦でいいところを見せたいね、と問いかけると畔柳は「はい」と笑った。 いざ近大戦。アイシールド21で始まったフットボール人生7年目も最終盤だ。レイバンズでの集大成を示すときが来た。
篠原大輔