52年ぶり頂点狙い今日深夜準決勝。なぜイングランドは復活したか?
国際大会での不振が続いていたことを受けて、FAは2014年から『イングランドDNA』と命名された、育成年代の抜本的な大改革をスタート。その体現者がサウスゲート監督であり、2つ目のキーワードである「国を挙げた育成改革」と結びついてくる。 FAが進めた『イングランドDNA』を簡潔に説明すれば、フィジカルに頼ってきた古典的なスタイルから脱却し、まずはテクニックを重視する視点でタレントを発掘。パスワークやコンビネーションにイングランドの伝統であるスピードを融合させながら、新たなスタイルを構築してきた。 改革の道半ばで図らずもフル代表を率いる形となった47歳のサウスゲート監督は、2016年末に正式に代表監督に就任。U-21代表で起用してきた才能ある若手を積極的に登用し、世代交代が同時進行で進められたイングランド代表は、ヨーロッパ予選のグループFを8勝2分けの無敗で首位通過する。 ロシア行きの切符を手にした指揮官は、ワールドカップ仕様のチームへ作り変えるプランを明言。その軸となったのが3バックへのスイッチだった。しかし、イギリス国内には「4‐4‐2」こそが伝統的かつ攻撃的なスタイル、という意見が根強く残っていた。 3バックで戦おうとするや、以前なら嫌悪感に近い思いを抱かれ、大論争も巻き起こりかねなかった。それが一転してファンやサポーターに抵抗感なく受け入れられたのは、プレミアリーグで生じている変化を抜きには語れない。 ジョゼ・モウリーニョをはじめとして、ジョゼップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップらの有力外国人監督が斬新な戦術をチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リヴァプールなどのビッグクラブに導入するようになって久しい。 特にイタリア人のアントニオ・コンテ監督が、2016-17シーズンの途中から採用した3バックはチェルシーをV字回復させ、結果的にリーグ優勝を勝ち取る原動力になった。続く2017-18シーズンは、プレミアリーグの20チームのうち、実に17チームが一度は3バックで戦う現象も招いている。 つまりは高年俸の名将を招へいできる「ビッグクラブの金満ぶり」が、ファンやサポーター、何よりも選手たちの間で3バックに対する免疫を生み出し、結果としてイングランド代表にも追い風をもたらしたことになる。