アメフトU20代表に初選出の日大QB、ブランク乗り越えU20世界選手権Vめざす
「やっぱ日大でフットボールがしたい」
昨年夏に部の活動が停止となってからは、ウェートトレーニングを自主的に行い、体力づくりを行ってきた。また、母校・佼成学園にコーチとして戻り、一緒に練習することで感覚が鈍らないよう努めた。 しかし、その後も日大アメフト部は、見通しの立たない膠着(こうちゃく)状態がつづいた。そして年末、急転直下で廃部が決まる。時期的にも、転校や受験をし直すのは現実的ではなく、事件に無関係だった仲間たちは、日大に残るという選択肢を選んだ。 廃部を機にチームを去った者もいたが、下級生を中心に、現在は70人ほどがチームで活動しているという。 小林は言う。「僕らはやっぱ、日大でフットボールをしたくて入ってきたので。そういう考え(転校など)にはならなかったですね。今は希望は見えてますが、これからどうなるかはわからないです。自分たちがやるべきことを、しっかりとやっていくだけです」
出口見えぬなか、社会人から気遣いも
このような厳しい状況下で、手を差し伸べてくれたチームもあった。社会人Xリーグ、X1Superに所属するオリエンタルバイオシルバースターから誘いを受けて、小林を含め10人ほどが練習に合流。対外試合でも、出場の機会をもらった。 「多くの大人の方たちが気を遣ってくれて。本当にお世話になりました」。小林は感謝の気持ちを口にした。 いまは部の立ち上げに向けて皆で話しあい、目標を全員ですり合わせながら、練習に取り組んでいる。一切のめどは立っていないが、「プラスのイメージを持ってやれています」と小林は今の気持ちを表現した。
初優勝の先に、部と自分の未来を求めて
近年は新型コロナウイルスの影響で国際試合の機会が減っていたため、小林は初めての日本代表入りとなる。今大会は、約1週間で3試合が行われるタイトなスケジュール。ハードな展開も想定されるが、見据えているのは、もちろんユース世界選手権での初優勝だ。 「今日の練習でも、まあ思うようにやれてるかなっていう手応えはあります。でも(実戦の)間隔が空いてるので、見えてない部分があったりして、腕は少し落ちてるかなと思います」。小林は練習の感触を振り返った。 それでも、今大会でワイドユニットのコーチを務める、高田鉄男コーチ(パナソニック、元日本代表QB)は小林のことを高く評価している。 「見てる感じ、ブランクなんて無いですよ! 彼の良いところは、持ってる能力をしっかり発揮できるところですね。俺だったら投げないってタイミングでも、積極的に投げて決める力を持っているんで、それはすごく良い味やなと思います。自分に無いものを持ってるので、結構感心してます。海外の大きい選手らと対戦するので、真っ向勝負だと厳しい局面もあるとは思います。そんな中で色んなことを経験して、それを自分なりに消化していくことが、今後の糧に間違いなくなるので。色々学んでくれたらいいなと思います」 小林に、今描いている目標を聞いた。「まだそんなに、具体的に何かになりたいとかはないんですが。アメフトは社会人になってもやると思います。ずっと関わっていきたいですね。これが今見える段階で、現実的な目標ですかね」 初優勝の先に、希望を見いだす。
北川直樹