【解説】「撮影罪」を新設 盗撮画像の廃棄・削除に“画期的”な仕組みも
これまで、盗撮行為の処罰には様々な“壁”があった。例えば、飛行機の機内での盗撮行為もその一つ。また、盗撮画像を“加害者”に返却しなければいけないという、理不尽なルールも。 こうした盗撮をめぐる問題の解消に向け、新たな法律が成立した。 「撮影罪」によって、何が変わるのか?
■これまでの盗撮行為の取り締まりと問題点
きょう国会では、盗撮行為を直接取り締まることのできる「撮影罪」を含む新しい法律が可決・成立した。これまでは、都道府県ごとに定められている迷惑防止条例などによって処罰されていた盗撮行為。しかし、条例を適用するにはまず、どの自治体で盗撮されたのかを特定する必要がある。そのため問題になっていたことの1つが、上空を飛行している飛行機内での盗撮だ。 実際、過去にはこんなケースもあった。2012年、乗客の男性が客室乗務員の女性のスカートの中を盗撮したとして逮捕。しかしその後の捜査で、盗撮をした時に飛行機が“何県の上空にいたのか”を特定することができず、どの都道府県の条例が適用されるのかを判断できないことから、男性は釈放されたのだ。 こうした問題を受け、航空業界の労働組合は法務大臣に要請書を提出するなどして、盗撮に全国一律で対処できる法律の制定を求めてきた。そして、今回の新しい法律で「撮影罪」が規定されることになったのだ。 今回の新法では「撮影罪」のほかにも注目すべきポイントがある。
『なんとか返さなくて済むよう交渉するしかなかった』 ある法務省関係者が話すのは、捜査段階で押収した性的画像のことだ。 こうした画像をめぐって、新法に盛り込まれたある仕組みについて、法務省幹部は“画期的”だと話す。新法では、盗撮の捜査で押収した性的画像は、たとえ不起訴になっても廃棄・消去することを可能にしているのだ。 例えば・・・Aさんが盗撮被害にあった事件の捜査のために、容疑者から押収した複数のハードディスク。それらのハードディスクからは、Aさんだけでなく、別のBさんの盗撮画像も見つかった。ただ、Bさんの盗撮に関しては、証拠などの関係から起訴にまで至らず、事件化されなかったり不起訴になったとする。 これまでは、没収ができるのは、あくまでも“有罪となった犯罪事実”に関する画像が入ったハードディスクのみ。それ以外は、容疑者側が要請すれば基本的に返却せざるを得なかった。Bさんの盗撮が事件化されなかったり、不起訴になっていれば、検察としては「明らかに盗撮された画像があるのに返さなくてはならない」という状況だったのだ。 検察はこれまでも、事件化されていない画像が入ったハードディスクを返却せずに済むよう努めてきたが、その方法が、容疑者との“交渉”しかなかったのが現実だ。 これまで検察は、容疑者側に、有罪にならなったものも含めた全ての画像や動画の所有権を放棄してもらうよう交渉。所有権を放棄してもらったうえで、廃棄・消去していた。ただ、所有権の放棄に合意する容疑者もいれば、所有権の放棄を了承せず、返却を求めてくる容疑者もいるという。 今回の新法では、容疑者側の言い分を聞いた上で、有罪になった事件以外の画像も検察が廃棄・消去できることが明記されたため、交渉ではなく、法律に基づいて廃棄・消去をすることが可能になったのが大きな特徴だ。法務省関係者が“画期的”と言う理由だ。