明治時代の書き方教科書 元小学校教諭が上富田町教委に寄贈、和歌山
和歌山県上富田町岩田の元小学校教諭、宮本昇さん(74)が、1903(明治36)年発行の尋常小学校の書き方の教科書を、町教育委員会に寄贈した。 【田辺以南は「参加」1割未満 小中学校、日帰り困難、和歌山県の万博招待事業の記事はこちら】 教科書は宮本さんが5年ほど前、町内の知人から譲り受けたもので、「文部省著作 第四学年用上 尋常小学書キ方手本」(発行所・日本書籍)。縦22センチ、横7・5センチと細長い。 中には「母は縫物をすまして茶を飲みそれより日本の三けいの話をなしたり。おはなは喜びてその話を聞きたり。」「暗き夜雨降る」「波の音船沈む」といった文章が書かれている。 裏表紙には手書きで3人の名前が書かれている。町教委の文化財担当、大谷逸人さん(69)によると、「岩田小学校百年史」の卒業生の中にある原口愛吉さん(明治39年卒業)、原口雪のさん(40年卒業)、原口やえさん(44年卒業)の名前と合致し、3人きょうだいでこの教科書を使い回していたことが分かるという。 当時の教科書は、現在のように無償ではなくそれぞれが買わなければならず、たいていは兄弟で使い回したり、近所の人から譲り受けたりしていたようだという。 この教科書の値段は3銭と書かれている。当時、あんパンが1銭、うどん、そばが5~7銭で、時期によるが1銭はいまの200円から250円だったようだという。義務教育の教科書を無償にする法律ができ、実施できたのは1963(昭和38)年度の1年生からだった。 宮本さんは「当時の様子を物語る貴重な資料なので、保存して教材などとして活用してもらえたらうれしい」と話した。町教委ではこの教科書を町の郷土資料館で保管する。 上富田文化の会の岩橋幸大会長(75)は「昔のものが捨てられ失われていく中で、こうした古い資料が残っていることは貴重で、後世に残していきたい」、大谷さんは「家庭で古いものがあれば残しておくべき貴重な資料かもしれないので捨てる前に、教育委員会まで連絡いただければ」と呼びかけている。
紀伊民報