“好きなことを仕事に”で陥りがちな、副業の意外な落とし穴
多くの企業で副業が解禁され、“好きなことを仕事に”、“新たな経済的自立(FIRE)”といったキャッチフレーズが飛び交う昨今だけど、勇み足で駆け出す前にちょっと待って! 副業や兼業がもたらす働き過ぎの弊害から、現代人が仕事に求めるもの、自己価値観への影響まで、仕事と私たちの関係を再確認。カナダ版『ELLE』より。
働き過ぎの人が増えている
近年、燃え尽き症候群や過労を訴える人が増えている。自分の情熱を追い求めているために、あるいは膨らみ続ける請求書を支払うために、理由は人それぞれだが従来の9時5時の仕事をはるかに超えて働く人が増えているのだ。 実際に、税務申告代理サービス大手H&Rブロックの最近の調査では、カナダ人の28%が収入を増やすために副業をしていると推定されている。
自分の価値と生産性はイコールではない
ジャーナリストであり、『The Good Enough Job: Reclaiming Life From Work(原題)』の著者シモーン・ストルゾフは、「ある程度までは、副業は不安定な経済情勢に対する合理的な対応として評価できる」と述べている。しかし、自分の情熱や興味を副業に変えることは燃え尽き症候群を引き起こしかねない。「あなたは日中働くだけでなく、余暇すら他の形態の仕事に変えようとしているのです。これによって生産性や仕事量によって自己価値観を測るようになってしまいます」
仕事に自分のアイデンティティを求める人々
ストルゾフは著書の中で「十分に良い仕事」について論じ、仕事や何をしているかに関係なく多様なアイデンティティを受け入れることこそ大切だと主張している。彼は、私たちは夢や完璧な仕事を追い求めるのではなく「自分の生活を支える仕事」を見つけるだけで十分なのかもしれないと言う。 「多くの人にとって、仕事は過去に宗教などが担っていた役割に取って代わるようになっており、人々は給料のためだけでなく、目的や意味、そしてコミュニティのために働くことを求めています。しかし、私たちの仕事は必ずしもそれを引き受けるように設計されているわけではないため、それが重荷になっているのです」