「定員内不合格」障がいある子と親の思い ”公立高校で学びたい”
岩手めんこいテレビ
「定員内不合格」は公立高校で定員に空きがあるのに入試で不合格になることを指し、岩手県内では2023年度、41人がこの定員内不合格となっています。(県教委調べ) 今、全国各地で重い障がいがある子どもたちが定員内不合格となっています。 一緒に学ぶことはできないのかー。県外の事例から考えます。 岩手県内に住む親子に聞きました。 障がいがある子どもをもつ親 「今(特別支援学校)中学部の1年生です。(進路は)不安しかない。何をどうしていいのか」 障がいがある子どもたちの進路への不安は尽きません。 重い障害がある子どもたちの学びの現状を知るべく千葉県を訪れました。 浜野こゆきさん15歳は、レット症候群という進行性の難病で、言葉は話せず身体と知的に発達の遅れがあります。 母の美由起さん(57)は、こゆきさんについて「自分の思っていたことが伝わった時に、すごくいい顔をする」と話します。 こゆきさんは現在「浪人生」。2024年高校を受験し「定員内不合格」となりました。 義務教育の間、障害がある人が学ぶ場所は大きく分けて3つあります。 1つ目が小中学校の通常学級。2つ目が小中学校の中にある特別支援学級。そして3つ目が特別支援学校です。 こゆきさんは小学校から中学校まで地元の学校の通常学級で学んできました。 その入学前に幼稚園である出来事がありました。 母 美由起さん 「初めて障害がある子と接するわけじゃないですか。娘の様子を見て『こゆきちゃん気持ち悪い』ってサッて行っちゃう子がいて。その時に娘の表情見たら、うつむいて寂しそうにしていたんですね。この子は分かってるなと思って、私 紙芝居作ったんです」 母・美由起さんが作った紙芝居には、こゆきさんの特性やお願いしたいことが分かりやすく描かれていました。 母 美由起さん 「先生に読んでもらったら、ガラッと友達の彼女への接し方が変わった。やっぱり正しく知ってもらうって小さくても必要なんだと思いました」 周囲との距離を徐々に縮めたこゆきさんは、中学校の頃、友達と一緒に山に登りました。 山頂では満面の笑み。言葉にならない思いがあふれ出ていました。 父の弘行さん(51)は「その笑顔を引き出したいなと思いますし、守りたいと思う」と話しました。 心通う仲間と過ごした学校生活の先に、普通高校受験という選択がありました。 こゆきさんは2月、千葉県内の公立高校を受験。5教科の試験に臨み不合格(定員4人オーバー)。 その後、面接と作文で合否が決まる2次募集にも出願しました。 61人の募集に対して志願者11人。不合格となったのは、こゆきさんだけでした。 父 弘行さん 「(不合格の掲示板を見て)娘は泣きながら車に走っていった。(定員内不合格の)特段の理由というのは、作文・面接試験の得点があまりに低かったというのが説明を受けた内容」 加えて「学習意欲が感じられない」ことが理由として挙げられたといいます。 母・美由起さんが「友達は大好きですか?」とこゆきさんに話しかけると、こゆきさんは美由起さんの手にタッチします。 手にタッチするときはイエスの時が多く、違うときは手を払うといいます。 母 美由起さん 「きょうは何が食べたい。からあげ?」(手を払うこゆきさん) 母 美由起さん 「学校好きですか?(こゆきさんがハイタッチ)、学校行って友達いっぱい作るぞ。(こゆきさんがハイタッチ)友達いっぱいいた方が楽しいね」 8月、こゆきさんに再びチャンスが訪れました。10月の入学に向けた「秋試験」の実施です。 普通高校の定時制で募集は4人、試験は面接と作文です。 個々の症状に配慮し、介助者と一緒に試験を受ける「特別配慮申請」をして試験に臨みます。 面接の質問には、〇×△で答えることにしました。 介助者と一緒に使う作文用の特性シートには、事前に準備したエピソードをこゆきさんの意思に沿って並べ、介助者の力も借り文字を書き写すのです。 できる準備を重ねて日々を過ごしてきました。 試験4日後の8月27日、発表の日です。 『募集定員4人。志願者1人。合格者なし』…こゆきさんの思いは届きませんでした。 かつて母・美由起さんが作った紙芝居には、こんな言葉がありました。 『言葉がなくても お友だちの言いたいことがわかるようになる方法が1つだけあります。それはね「この人は何がいいたいのかなぁ」と一生懸命、お顔や目を見て考えてあげることです』 こゆきさん、あなたは今、どんな気持ちですか? こゆきさん、何か伝えたいことはありますか? こゆきさんは今も共に学べる場所を探し続けています。 岩手県内の2023年度の定員内不合格者41人について、県教育委員会は取材に対し、この中に障がいがある人がいるかは把握していないとしています。
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