未来のモビリティの行く末を占う、壮大な社会実証都市「Toyota Woven City」、Phase1の建築完了
CES 2025 プレスカンファレンス プレゼンテーションの概要
────────── 豊田章男会長プレゼンテーション ────────── みなさま、こんにちは。 本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。多くのカメラに撮影され、テイラー・スウィフトになった気分です! 冗談はさておき、トヨタと聞くと、おそらくみなさんはクルマの信頼性や品質、お手頃価格といったことを思い浮かべられるでしょう。 一方で、“未来の実証都市”を真っ先に思いつくことは少ないかもしれません。 しかし5年前、まさにここ、この同じステージで、どうやら同じネクタイをしていたようです。 トヨタは実証都市をつくると発表しました。それが「ウーブン・シティ」です。 ウーブン・シティは、美しい富士山のふもとに位置しています。ここは人が住み、働き、楽しむだけの場所ではなく、あらゆる新しいプロダクトやアイデアを発明・開発できる場です。 住民たちが自発的に参加する、実証実験の街であり、インベンター(発明家)は実際の生活環境で、新しいアイデアを安全かつ自由に実証できます。 ウーブン・シティは、未来の暮らしを考え、向上させる仲間を、世界中から歓迎します。 そして本日、ウーブン・シティのフェーズ1の竣工を発表させていただきます。 今年から住民が住み始め、徐々にリアルな実証の場として発展させていきます。フェーズごとに住民は増加し、最終的には約2,000名が住む予定です。住民にはトヨタ従業員やその家族、定年を迎えた方、小売店舗、実証に参加する科学者、各業界のパートナー企業、起業家、研究者などが含まれます。 そしてもちろん、ペットも大歓迎です! こちらが私のペット・ミニーです。ミニーもウーブン・シティにすぐに馴染むことでしょう。 ウーブン・シティの交通手段はすべて低排出、もしくはゼロエミッション…理由はサステナビリティが私たちが取り組む優先事項のひとつだからです。 そして日本で初めて、コミュニティに対するLEED認証カテゴリで、最高ランクであるプラチナを取得しました。 ウーブン・シティでは、4つの領域の研究とイノベーションに注力していきます。ヒト/モノ/情報、そしてエネルギーのモビリティです。ここを“モビリティのテストコース”とし、私たちが抱える課題の解決策を開発していきます。 たとえば、車椅子レースカーのようなパーソナルモビリティです。誰もが速いクルマを楽しむべきですからね! 夜間に安全に帰宅をエスコートしてくれるドローンや、高齢者に寄り添って支援するペットロボット。 私たちの仲間であるJobyが開発した空飛ぶクルマなどもあります。空飛ぶクルマなら、ウーブン・シティから東京まで、迅速かつ渋滞なく移動できます! そしてJobyのようなパートナーのために、工場だった建物の1つを、航空機を格納できるほど大きい実験場に作り変えました! ですので、広いスペースを探しているインベンターの方がいましたら、ぜひ私たちのことを覚えておいてくださいね! ウーブン・シティの住居も未来のテクノロジーのための実証の場となります。たとえば、日常生活をサポートしてくれる在宅ロボットもそうです。 私たちはいま、搭載したカメラで人間の動きを観察して家事を学習するロボットを開発中です。 ご存じかもしれませんが、日本をはじめアジアでは、洗濯物を畳むことは重要な家事のひとつです。こちらは、スタッフが手持ちカメラを使ってロボットにTシャツの畳み方を見せている様子です。そしてこちらが、送られたデータを学習した、翌日のロボットです。 ロボットは一夜で、3点をつまむ畳み方を完璧に習得しています! これは一例ですが、このようなテクノロジーを、ウーブン・シティで開発して、実証することを考えています。 自動化した物流や、e-Paletteの自動運転による移動など、自動化にも取り組みます。 ここだけの話ですが、私自身、トヨタのマスタードライバーとして、自動運転は少し退屈だと思っていました。 しかし、開発チームから自動でドリフトする2台のレースカーを見せてもらい、その考えは変わりました。子供なら「最高!」と言うでしょう。私もぜひ乗ってみたいです。 自動運転は人工知能(AI)含め、ウーブン・シティで開発予定の数多くのテクノロジーのひとつです。 とくに、AIを活用し、ウーブン・シティの範囲を広げていきたいと考えています。これで、外部の方々と、ウーブン・シティで取り組んでいるプロジェクトをバーチャルにつなぐことができます。 彼らはウーブン・シティでのバーチャルな私を作ろうとしています。ただし、それはまだ作成中のものです! 2021年に着工したウーブン・シティは、Woven by Toyotaのチームメンバーが愛情を込めて作り上げています。 Woven by Toyotaはこのプロジェクトをサポートする、独立した会社で、世界中の60以上の国と地域から集まった2,200人のチームメンバーが在籍しています。 Woven by Toyotaのミッションはヒト中心のテクノロジーを作り、モビリティを拡張して、幸せを量産することです。 クルマの新しいオペレーティングシステムの「Arene(アリーン)」や、実世界の環境を再現するデジタルツインのプラットフォームも開発中です。 またVision AIは、ビデオデータ分析とAIを組み合わせることで、ヒトやモノの動きをより深く理解できます。 リアルとデジタル両方の環境を活用し、新しいテクノロジーをウーブン・シティで迅速に実証、開発していきます。 さて、みなさんは「ウーブン・シティはトヨタに収益をもたらすのか」と考えているかもしれません。 おそらく、そうはならないでしょう! しかし、それで構いません。 グローバル企業市民として、私たちの未来に投資し、トヨタが培ってきた知見や技術を他の人たちと共有し、地球と人々に幸せをもたらす新しいアイデアを支援する責任があると考えています。 新しいアイデアで人々を幸せにする、それがウーブン・シティをつくった理由です。 今年の夏にはピッチコンテストを開催し、経済的支援が必要なスタートアップや個人がウーブン・シティでアイデアを実現するための資金を提供します。 トヨタの強みと、自動車産業ではない業界の強みを組み合わせることで、一社やひとりでは創りだせない新しい価値や新しいプロダクト、新しいサービスを創りだせると信じています。 私たちはこれを“かけ算による発明”だと考えています。 一緒に取り組めば、スカイ・イズ・ザ・リミット、不可能なことはありません! スカイ/空といえば、私たちはロケットにも着目しています。 モビリティの未来は、地球や自動車会社1社に制限されるべきではありません! ご存じない方もいるかもしれませんが、トヨタはもうすぐ100周年を迎えます。 ただし自動車会社としてではなく、世界初の自動織機のインベンターとして、です。そうです。 トヨタはクルマづくりから始めたのではなく、布を織ることから始まりました。それが、将来ウーブン・シティに住む方を「Weavers(ウィーバーズ)」と呼んでいる理由です。 クルマのテストドライバーと同様に、ウーブン・シティの住民には、インベンターが開発した新しいプロダクトやサービスを体験していただき、未来をともに紡いでいく大切な役割を担っていただきます。 ウーブン・シティではコラボレーションがすべてです。多様な視点や才能、能力をひとつの布に一緒に織り込み、私たちの未来の当たり前を創るチャンスです。 その未来で、私たちはヒトだけではなく、心も動かしたいと考えています。 今日、私の話を聞いて、未来をより良くしたい、変化を起こしたい、価値のあることをしたいと感じ、ワクワクしたみなさん。ウーブン・シティに参加する招待状を受け取ってください。 ご清聴ありがとうございました。
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月刊自家用車編集部