真田広之、64歳の誕生日 “歴史的快挙”「SHOGUN 将軍」までの軌跡を振り返る “日本の良さ”信じ続けた名優
俳優の真田広之が、10月12日に64歳の誕生日を迎えた。自身がプロデューサー・主演を務め、9月15日(現地時間)にアメリカ・ロサンゼルスで授賞式が開催された「第76回エミー賞」で18部門受賞、個人としても主演俳優賞に輝いたことで話題のドラマ「SHOGUN 将軍」では、「日本の文化を世界に正しく紹介したい」を旗印にこれまでのハリウッド制作のエンタメ作品が描いてきた“ジダイゲキ”とは一線を画す、戦国スペクタクルを作り上げることに成功した。今回は、世界が注目する真田についてあらためて紹介したい。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】世界の真田広之へ!「SHOGUN 将軍」でエミー賞主演女優賞を獲得したアンナ・サワイとの2ショット ■日本の名優から世界的スターへ 幼少期に子役として芸能活動をスタートさせた真田は、中学進学と同時に千葉真一さん率いるジャパンアクションクラブ(JAC/現:ジャパンアクションエンタープライズ)に入門し、アクションを習得。同じく中学時代から日本舞踊の玉川流でも鍛錬を続け、名取となった。 1990年代には社会現象を巻き起こした「高校教師」(1993年)をはじめ、数々の人気ドラマに主演し、2003年には映画「たそがれ清兵衛」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。同じ頃、トム・クルーズ主演の映画「ラスト サムライ」(2003年)で初めてハリウッド作品に出演した。同作は、江戸幕末・明治維新期の日本をハリウッドならではのスケールで描いた映画で、真田はサムライたちのリーダー格・氏尾を演じた。「ラスト サムライ」が世界的大ヒットを記録し、日本を代表するハリウッドスターとなった真田。 その後も日本の映画「亡国のイージス」(2005年)で主演を務めたりもしたが、拠点をアメリカ・ロサンゼルスに移し、本格的に海外での作品に参加するように。映画「ラッシュアワー3」(2007年)、「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013年)、「47RONIN」(2013年)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)、「MINAMATAーミナマター」(2021年)、「モータルコンバット」(2021年)、「ブレット・トレイン」(2022年)、「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(2023年)など、誰もが知るような大作にも名を連ね、日本が誇るハリウッドスターの1人としての地位を確立してきた。 そんな中で、彼にとって新たな代表作となる作品「SHOGUN 将軍」との出会いがあった。同作はジェームズ・クラベルのベストセラー小説を原作に、陰謀と策略が渦巻く日本の戦国時代を描いた物語。徳川家康をモデルとした戦国一の武将・吉井虎永役を真田が担い、虎永と運命を共にする英国人航海士ジョン・ブラックソーン(のちの按針)をコズモ・ジャーヴィス、細川ガラシャをモデルとしたキリシタン・戸田鞠子をアンナ・サワイが演じた。また、虎永の家臣の樫木藪重役を浅野忠信、虎永と天下の覇権を争う敵将・石堂和成役で平岳大、虎永の腹心・戸田広松役で西岡徳馬が出演し、ほかにも主要キャストのみならず端役まで“日本人役を日本人キャスト”が務めた希有なハリウッドドラマだ。 これまでもハリウッド制作の作品に出演してきた真田だが、日本人キャラクターが登場し、描かれることに対して「どのプロジェクトでもできるだけ直そうとしたり、コンサルティング的なことはずっとしていたのですが、やはりイチ俳優としてできることの限界をずっと感じていました」という思いがあったそうで、本作ではプロデューサーという立場で「正しく日本を伝える」ことを徹底。 そんな真田の思いに共鳴した日本映画界で時代劇経験豊富なスタッフが集結し、脚本はもちろん、衣装デザイン、美術の構想段階から徹底した時代考証を行い、撮影でも動きや所作、せりふの一言一句まで、本物の日本にこだわった。 ■真田のこだわりが実を結び「エミー賞」席巻 本物は本物を知る、ということか、真田の“本物のこだわり”が結実し、“米国テレビ界のアカデミー賞”とも称されるエミー賞の栄誉をチーム一丸で勝ち取った。真田は同・授賞式のスピーチで、作品賞の受賞に対して「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます」「あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り国境を越えました」と語っていた。 「憧れるのをやめましょう」。同じく海を渡り、前人未到の記録を作り続ける若き日本の侍・大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース所属)が野球の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」でアメリカとの決勝戦を前に放った名言だが、この言葉はどんな世界にも当てはまる。 ジョニー・デップ? ブラッド・ピット? いやいや、日本には真田広之がいるじゃないか。日本人だからと気後れするのではなく、日本人だからこそ“日本の良さ”を信じ、ハリウッドだろうがコーチェラだろうが、自分を信じて力を尽くすこと以外、必要なことは何もない。 日本が誇るハリウッドスター・真田の矜持によって正しく世界に伝わった代表作「SHOGUN 将軍」は、既にシーズン2&3の制作も決定している。エグゼクティブ・プロデューサー及び脚本のジャスティン・マークスとレイチェル・コンドウ、エグゼクティブ・プロデューサーのミカエル・クラベル、もちろん真田と作品の主要なクリエイティブ・パートナーが参加することも発表されている。 真田は「世界中から次も見たいという声を頂き、次(シーズン2)もやろうかという話になった。ライターズ・ルームがオープンし、ロケ地・スタッフィングの話をしています。SHOGUNのテイストに合ったものを選びながら、フィクショナル・エンターテイメントとして仕上げていきたい。1年後(の撮影開始)を目指しています。長い旅の始まりに今、立ったところ。70%が日本語のセリフの作品が、この結果に繋がったことは、(SHOGUNの物語を伝える)可能性が広がったと感じます」とコメントを寄せていたが、衝撃のどんでん返しだったシーズン1のラストからの“虎永のその後”に期待が膨らむばかりだ。 ドラマ「SHOGUN 将軍」(全10話)はディズニープラスのスターで独占配信中。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部 ※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記