経営多角化

　鉄道会社は主要駅周辺などの宿泊需要を見込み、早くからホテル運営を手がけてきた。関東を地盤とする東急電鉄系の東急ホテルや関西地盤の近鉄グループの都ホテルが福岡市にも展開するなど、西鉄以外にも広域展開に力を入れるケースは多い。

　一方、旧国鉄の分割・民営化で発足したJR各社は自社のエリア内でホテルを展開するケースが多かった。だが、国鉄から赤字路線を引き継ぎ、多角化を急いだJR九州は14年、このくびきを脱し東京に進出した。現在はバンコクや京都など、全20施設中5施設が九州外だ。

　JR九州にとってもホテル事業は成長の柱の一つ。従来、国内ではブランドごとに四つの子会社が運営してきたが、今年10月には集約して一体運営を担う新会社「JR九州ホテルズアンドリゾーツ」を設立する。子会社の1社から社長に就く角谷英彦氏は、「訪日客が多い札幌、金沢、広島市への進出も検討したい」と事業拡大に意欲を見せている。

稼働率、大都市圏で高く

　ホテルや旅館などの宿泊施設の稼働率は地域差が大きく、大都市圏で高い傾向にある。こうした地域にはホテルの進出も相次いでいる。

　国土交通省がまとめた6月の宿泊施設の稼働率（速報値）は全国平均で58．5％だった。都道府県別では東京の76．7％が最も高く、大阪府（74．0％）、福岡県（68．9％）と続いた。このほか、北海道や愛知県、京都府、広島県など、政令市を抱える道府県が60％を超えるケースが目立つ。

　九州・山口・沖縄では福岡県の需要の高さが際立つ。一方で佐賀、長崎、宮崎、鹿児島県は40％台にとどまり、地方は厳しい状況にある。