旅館を超えた高級ホテル ザ・リッツ・カールトン京都とは
■自慢のピクチャーウィンドウからの眺望は絶品 窓の向こうに広がる鴨川の清流と東山三十六峰の山並み。桟(さん)を極力省いた大きな窓は、それ自体がさながら一つの絵画のよう。時が経つのも忘れて、いつまでも眺めていたい―。 そんな落ち着く空間を演出しているのは、今年2月に開業した「ザ・リッツ・カールトン京都」。大阪、東京、沖縄に続いて、京都は鴨川の畔に誕生した。 「鴨川と東山の両方を一緒に楽しめるホテルはウチだけなんですよ」。こう語るのはザ・リッツ・カールトン京都のPR・マーケティングマネージャーの山集杏里(やまずあんり)さん。全134室のうち半分以上が“鴨川ビュー”の部屋で、「ピクチャーウィンドウ」といわれる窓からの眺めは、自慢の一つだ。
ザ・リッツ・カールトンといえば世界有数のホテルチェーン、マリオットホテルグループの最高級ブランドの五つ星ホテル。「(米国の)本社では、かねてから京都に造りたいというのがあって。経営陣が、京都が大好きで、特別愛着があったんです」(山集さん)とは言うものの、はたして“洋”のホテルが“和”の地、京都に馴染むのだろうか。そもそも京都の宿といえば『旅館』。高級旅館をさしおいて、高級ホテルという選択肢は存在し得るのか。その疑問は、山集さんに案内されていくうちに納得へと変わっていった。
■和服美人がお出迎え 外観はおよそ外資系ホテルのイメージとはかけ離れた、和モダンといった佇まい。高さ制限のある京都の街中ゆえ地下2階、地上5階。都心やリゾート地のものとは一線を画している。「日本の伝統や文化、京都の歴史に敬意を払って、周辺の街並みにも馴染む外観になっています」と、色合いもシックで、素材にも周囲への気配りを施している。 町屋建築の明と暗を巧みに取り入れたというロビーエリアでは、老舗の京和傘「日吉屋」の照明が、柔らかな光を湛えて出迎えてくれる。意外なほどコンパクトなフロントを通過し、全世界の同ホテルグループでも初めて、という部屋でのチェックインとするため、煩わしさは一切ない。しかも、和服の京美人が、名前の確認だけで、すぐに部屋へ案内してくれる。 「スタッフの着物姿は外国人のお客様に、特に好評で、『ワォ!』なんて喜ばれています」。旅館の“制服”のように同じ色柄ではなく、幾種類も用意されている着物は艶やかで、外国人でなくともうっとりする。客室に移動すると、ここも何やら落ち着くというか、しっくりくる。なるほど、壁面は壁紙ではなく木材を使用している。家具類も木を用いたオリジナルのもの。各部屋にあるという盆栽ともマッチしている。 そしてソファの上のクッションは「細尾」の西陣織。「細尾さんの『文化や伝統を守りながらも新しいものに挑戦する』という考えに共感して、コラボをお願いしたんです」と山集さん。随所に京都らしさが散りばめられている。 圧巻はお風呂だ。ホテルには珍しく木のすのこを敷き、壁には一面、凹凸で描かれた桜の木!そしてバスタブ底の滑り止めの意匠は桜の花びら。あたかも、はらはらと桜の花が舞い散ったかのような美しさを表現している。 当然、ロゴ入りの浴衣などはなく、「上質な素材感を大事にしました」という麻素材のアースカラーの浴衣は、旅館のようなくつろぎ方もでき、それでいてラグジュアリー感も堪能させてくれる。また、至る所に使われている意匠は、七宝や青海波、麻の葉といった伝統の文様をデザインしたもの。特に象徴的なのがドアやベッドボード、ベッドスプレッドなどの七宝の吉祥文様。「おめでたい柄で、お客様とのご縁がずっと続きますようにという意味が込められているんです」。