銀シャリがコンビで決めている寝坊対策とは?二人とも寝坊したときはアウトだが、実は病欠時の対応も万全
コンビの関係性によって異なると思うが、銀シャリに限って言えば、同じキャリアを積み、ほぼ同じ経験をしているので、仕事でぶち当たる壁も似ているし、乗り越えるべき試練も僕らは結構同じだ。マリオとルイージのような、双子のような、マナカナみたいな感じ。ナオカズの方が、ナオとカズヒロより、まだしっくりくるかもしれない。いずれにしても、自分以外に自分のような存在がまだもう一機ある感じというか……。このニュアンス、伝わるだろうか? だから、少し前に結婚してからも、スムーズにあまり違和感なく過ごせているのも、この漫才師という仕事、コンビの関係性ゆえな気がしている。 ふと、もう実家の家族よりも長く、鰻と一緒にいると思うと変な感覚がする。しかも、これから一緒に生活していく妻と比べても、鰻が僕に関してもつアドバンテージはだいぶ大きいものがある。漫才の立ち位置的に僕は鰻の左側にいるので、自分の顔より鰻の顔の左半分の方がよほど長く見ているだろう。 おばあちゃんの家に遊びに行って帰る時に必ずかけられる一言。 「ほんまに体にだけは気をつけてな」 最近、そんなおばあちゃんの気持ちになってつくづく考える。「鰻よ、体にだけは気をつけてくれ」と。年をとると、こんなことを恥ずかしげもなく普通に言えるようになるものなのだ。 鰻はよく海外旅行に行くので、そのたびに「どうか気をつけてな」と告げるし、原付で劇場に来る時も「くれぐれも気をつけてな」と思っている。 でもこれも、鰻のためというより、一人だと大御所の芸能人の方の楽屋をノックできへんし、この年でわからへん常識なんかも他の人には恥ずかしくて訊かれへんし、腹が立った人への悪口も言われへんからや。寂しいとはたぶん違う。いや、寂しいだけか。 鰻さん、僕が「もうええわ!」とツッコむまでは元気でいてください。 (銀シャリ橋本直さんのエッセイの連載は毎月第3金曜日にブックバンで公開。橋本さんの“ツッコミ中毒”な日々が綴られます) *** 橋本直(はしもと・なお) 1980年生まれ。兵庫県出身。関西学院大学経済学部を卒業後、2005年に鰻和弘とお笑いコンビ「銀シャリ」を結成し、2016年に「M-1グランプリ」で優勝。現在はテレビやラジオ、劇場を中心に活躍し、幅広い世代から人気を得ている。 Book Bang編集部 新潮社
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