五輪前までに運行開始へ 東京都が基幹交通に位置づける「BRT」構想とは
鉄道を整備するほどの需要はない地域で
現在、日本の各地では鉄道を整備するほどの需要はないけれど、公共交通を整備する必要性がある地域は増えつつあります。そうした地域では、自治体が主導してBRTを導入しているケースがいくつかあります。 名古屋市では2001(平成13)年から高架の専用道路を使ったBRTの一種とされるガイドウェイバスを、岩手県・宮城県の気仙沼線と大船渡線では東日本大震災で線路が被災して使用ができなくなったことから代替交通として専用道路を使ったBRTの運行を始めました。今年に入ってからは、新潟市が9月5日に連接バスによるBRTの運行を開始しています。 東京都は連接バスや環境に配慮した水素バスをBRT用の車両として使う予定にしていますが、専用道路は設けません。そのかわり、バスをスムーズに運行できるようにバスが交差点を通過する際に、優先的に信号を制御する「PTPS」と呼ばれるシステムを導入する方針です。定時性を高める工夫として、事前改札など乗降時間を短縮するアイデアも検討されています。 現在、協議会は需要を測定して路線案をいくつか検討しているほか、虎ノ門エリアにバスターミナルを設ける予定で調整しています。
五輪終了後の臨海部の住民の“足”に
東京都は、五輪が終了した後の臨海部は再開発などでタワーマンションが立ち並び、約4万人が居住すると試算しています。4万人すべてが通勤通学をするわけではありませんが、同エリアは公共交通空白地帯です。東京五輪のためだけではなく、その後を考えても交通インフラを整備する必要性は理解できます。しかし、同エリアに4万人も居住するとなったら、鉄道よりも輸送力が少ないBRTでは対応が難しいようにも思えます。地下鉄やLRT(新型の路面電車)を整備する方針はないのでしょうか? 「現段階では、地下鉄やLRTは検討していません。なぜなら、今から地下鉄やLRTの建設を始めても2020年のオリンピックに間に合わないからです。しかし、今後の社会的状況の変化で、地下鉄やLRTを建設する可能性もあるでしょう。仮に地下鉄やLRTを建設するにしてもBRTはなくしません。併存になるでしょう」(同)