SNSの新スター「カバの赤ちゃん」はなぜ多くの人の心をつかんでいるのか
TikTokのアルゴリズムで思いがけないセレブが誕生した。生後2カ月の雌のコビトカバのムーデンだ。TikTokでその動画が数百万回視聴され、かわいいムーデンの画像はネット民を虜にしている。 ムーデンはタイ南部のカオキアオ動物園で飼育されている。 水をかけられているところや、飼育員に抱え上げられて悲鳴をあげている様子のムーデンの画像は瞬く間に拡散し、その姿にすっかり魅了されたSNSユーザーのお気に入りとなっている。コメントが続々寄せられ、シェアも広がっている。 ムーデン人気を受けてカオキアオ動物園のSNSアカウントのフォロワーは急増し、X(旧ツイッター)で5万人、フェイスブックでは40万人超のフォロワーを新たに獲得している。 ネットでもてはやされるようになったかわいい動物はムーデンが初めてというわけではないが、ムーデンは驚くほど有名になり、多くのイラストやミーム、グッズが生まれている。カオキアオ動物園によると、ムーデンの画像などがネット上で広まって以来、週末の来園者数は倍増したという。 化粧品大手のSephora(セフォラ)すらムーデン人気に便乗して「赤ちゃんカバのようにチークを入れよう 」という広告を出した。 ■ムーデン人気の背景 ムーデンが有名になったのは、フォロワー数250万人以上を誇るとあるTikTokアカウントのおかげだ。このアカウントはカバやカオキアオ動物園の他の動物の動画を定期的に投稿している。 ムーデンはかなり遊び好きという話だが、ムーデンの人気の秘密は単純だ。本物の生き物というよりポケモンのキャラクターのようで、本当にかわいいからだ。 ムーデンの小さくてつやつやした体は赤ちゃんのようにむっちりしていて、大きくて表情豊かな顔は愛らしい動物のイラストを描きたい人にとってこれ以上ない被写体だ。 ムーデンが有名になったのには別の要因もありそうだ。ムーデン絡みのコンテンツは、SNSのタイムラインから多くの不快なコンテンツを一掃する「タイムラインの浄化剤」のようなものという声もある。 ムーデンのコンテンツを何回も閲覧することで、ユーザーの興味や関心に沿うものを表示するアルゴリズムがリセットされる。これにより、現在ネットのあちこちで見られる反発や怒り、論争が部分的に表示されなくなる。 心塞ぐようなニュースが世界にあふれる今、かわいらしい動物の写真を眺めることで癒しや求めていたときめきが得られる。 だが、ネット上で有名になることには負の側面もある。SNSへの歌の投稿をきっかけにブレイクした米歌手のチャペル・ローンは、一線を越えてプライバシーを侵害する執拗なファンを非難し、これをきっかけに他の有名人も同じように声を上げた。 残念ながらムーデンも、取り憑かれたようなファンの行為で危険な目に遭っている。ムーデンに会いに来た人の一部は乱暴になり、ムーデンの注意を引くために食べ物を投げつけたこともあったようだ。寝ているムーデンに来園者が水をかけたところをとらえた映像はSNS上で広く反発を招いた。 カオキアオ動物園の園長は来園者にマナーを守るよう呼びかけている。また、ムーデンの囲いの周囲に複数の監視カメラを設置したことを明らかにしてムーデンの身を心配しているファンを安心させた。 コビトカバは絶滅危惧種で、野生の頭数は3000頭以下とされている。自然保護活動家らは、ムーデン人気がコビトカバについて学ぶきっかけになることを願っている。
Dani Di Placido