なぜ名車「スカイラインGT-R」を電動化? 日産の有志たちの“GT-R愛”が生み出したコンセプトカー「R32 EV」はいかにして誕生した
名車“R32型GT-R”を電動化した大胆なコンセプトカー
日産自動車は2025年1月10日、R32型「スカイラインGT-R」をBEV(電気自動車)へとコンバートしたコンセプトカー「R32 EV」を、「東京オートサロン2025」に参考展示すると発表しました。 【画像】「えっ!…」電気で動くGT-Rだって!? これが日産のコンセプトカー「R32 EV」です(27枚)
「R32 EV」は、往年の名車であるR32型「スカイラインGT-R」に最新の電動化技術を融合したコンセプトカーです。 1989年8月、16年ぶりに復活したR32型「スカイラインGT-R」は、専用設計の2.6リッター直列6気筒ツインターボの“RB26DETT”エンジンを搭載。当時としては日本車最強となる280馬力を発生しました。 駆動方式には、FRベースでありながら路面状況に応じて前後の駆動力を自在に配分する電子制御式のトルクスプリット4WDシステム“アテーサE-TS”を採用。さらに足回りには、世界トップクラスの運動性能を発揮する4輪マルチリンク式サスペンションを新設計するするなど、まさに走りのための技術が満載されていました。 そんなR32型「スカイラインGT-R」をベースとするコンセプトカー「R32 EV」は、日産のエンジニアが30年以上前にワクワクした走りの魅力を再現し、30年後の未来にもR32型に備わるワクワク感を継承していきたいとの熱い思いから製作がスタート。取り組みに賛同した社内の有志メンバーが課外活動的に集結し、R32の魅力を再現すべく試行錯誤を繰り返すことで具現したモデルだといいます。 チームリーダーの平工良三(ひらく・りょうぞう)さんは、「R32は30年以上も前にデビューしたクルマですが、今、運転してもワクワクする楽しさを味わえるモデルで、現代のクルマとは違った高揚感や気持ちよさを感じることができます。このワクワク感を後世に残すことはできないかとの思いから、『R32 EV』の製作活動が始まりました」と、プロジェクト発足の動機を振り返ります。 気になるパワートレインには、日産の最新BEV技術を惜しみなく投入。オリジナルのR32が搭載するRB26DETTエンジンや4WDシステム“アテーサE-TS”に代わって、「リーフ」が採用するモーターを前後に搭載しています。 バッテリーには、「リーフ」のレーシングカー仕様である「リーフ NISMO RC02」と同じものを仕様。車両重量に合わせてモーターの出力やトルクをチューニングすることで、R32型「スカイラインGT-R」と同等のパワーウエイトレシオとしています。 ●オリジナルのデザインを継承した内外装は雰囲気満点 そんな「R32 EV」のエクステリアは、R32型「スカイラインGT-R」のシルエットそのものですが、ストッピングパワーを強化すべくR35型「GT-R」のブレーキシステムを移植。 それに合わせて、R32オリジナルの5本スポークホイールのデザインを再現した18インチアルミホイールを特注・装着するなど、細部はBEVコンバージョンモデルならではの仕様となっています。 インテリアも、ステアリングやシフトノブといった基本デザインこそR32型「スカイラインGT-R」のそれですが、メーターとセンターコンソールには新たに液晶パネルを採用。 ただし、パネルの表示デザインはR32型「スカイラインGT-R」のオリジナルを踏襲したもので、R32の雰囲気は失われていません。 さらに興味深いのは“サウンドの再現”です。R32型「スカイラインGT-R」が搭載するRB26DETTの音や振動を表現できる専用のサウンドシステムを搭載しており、アイドリング音や空吹かしした際の音や振動、さらには、パドルシフトでシフトチェンジした際のエンジン音の変化も再現しています。 * * * R32型「スカイラインGT-R」といえば、今も多くの人々にとって憧れの存在です。そんな日産のシンボルのようなクルマをBEVへコンバートすることに対し、社外はもちろん社内からもさまざまな声が挙がったそうです。 しかし、日産の有志メンバーたちは、R32型「スカイラインGT-R」のDNAを未来へと継承すべく、BEVだからこそ実現できるR32を目指したといいます。 オリジナルへの愛情を抱く作り手たちが手がけたからこそ形となった「R32 EV」は、R32や「スカイラインGT-R」のファンだけでなく、多くのクルマ好きにとって注目すべき1台といえそうです。
VAGUE編集部