「ていねいな老後」を送る年金月20万円"西荻夫婦”を襲った日本年金機構からの「赤い封筒」の中身。お金の管理が「ていねいじゃない」息子が引き起こした悲劇とは?【社労士が解説】
未納が続くと強制徴収
国民年金保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日。たとえば、9月分の保険料は10月末日、10月分の保険料は11月末日までに納めなければなりません。 保険料が納付期限までに納付されない場合、納付督励が行われます。まずは電話や文書により保険料の納付を促されますが、さらに未納が続くと特別催告状が届きます。特に、赤色の封筒で届いたらかなりの危険信号です。 それでも保険料が納付されない場合には、最終催告状が送られてきます。最終催告状は、自主納付を促すために送付される最後の催告文書です。これを無視し、最終催告状の指定期限までに納付しないと督促状が届き、督促状の指定期限までに納付しなければ強制徴収へと進みます。 具体的に外部委託による納付督励の件数をみてみましょう。 令和5年度には、文書による納付督励は972万件、電話による納付督励は1,841万件行われています。令和5年5月以降、外部委託による戸別訪問は行われていませんが、令和4年度には409万件の戸別訪問による納付督励が行われています。 外部委託による納付督励はなんと毎年3,000万件前後。未納保険料を納めてもらうため、かなり多くの納付督励が行われていることが分かります。
「ダメだ、逃げられない…」
先にみた通り、たび重なる納付督励に応じないと、強制徴収の実施に向けた動きが始まります。対象となるのは「控除後所得300万円以上かつ7月以上保険料を滞納している方」です。 強制徴収の実施は不公平感の解消と波及効果を狙ったもの。令和5年度において、最終催告状は176,779件、督促状は102,238件、財産差押は30,789件となっています(最終催告状、督促状、財産差押の件数は当該年度に着手した件数)。 ちなみに、「所得1,000万円以上かつ滞納月数13月以上」である場合には、悪質な滞納者に係る保険料の徴収が困難な事案として、国税庁へ強制徴収の委任が行われます。令和5年度には86件の委任が行われました。 Aさんは社労士から保険料未納者への対応や財産差押の話を聞き、「ダメだ、逃げられない……」と観念しました。 多趣味でやりたいことがたくさんあるAさんはFIREを目指し、数年前から財産のほとんどを日本株や信用取引につぎ込んでいたそうです。 最近は相場環境が良かったことから「年金なんて払わなくても俺の老後は大丈夫」と楽観的でしたが、8月の初めにブラックマンデーを超えるまさかの大暴落。大きな損失を抱えて年金保険料を払うお金がないといいます。話を聞いた両親は口あんぐり。なんと言っていいか分かりません。 とはいえ、このまま見過ごすわけにはいきません。世帯主は父親であり、息子の保険料の納付義務があるからです。財産の差押えなどとんでもありません。仕方なくカフェの準備資金の一部を息子の未納保険料に当てました。 父親はうなだれる息子に対し、「お前もこれからはていねいな暮らしを心がけろよ」と一言。息子は涙ながらに頷きました。 角村 俊一 角村FP社労士事務所代表・CFP
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