島の独自性や魅力を伝える 「徳之島町史」刊行シンポ
鹿児島県徳之島町が約6年かけて完成させた「徳之島町史」の刊行を記念したシンポジウム「ここまでわかった、島の自然と島っちゅぬ歴史」(町教育委員会主催)が25日、町生涯学習センターであった。町史編纂(へんさん)で専門部会長を務めた5氏が登壇。町史編纂で得られた知見や、それぞれの専門分野から見た徳之島の独自性や魅力を伝えた。 シンポジウムは講話「むんがたり」と対談「さらに深掘り」の2部構成。奄美大島自然保護協議会顧問の服部正策さん(自然)、鹿児島大名誉教授の皆村武一さん(近現代)、沖縄国際大学教授の深澤秋人さん(近世)、瀬戸内町立郷土館学芸員の町健次郎さん(民俗)、鹿児島大国際島嶼(とうしょ)教育研究センター長の高宮広土さん(先史・古代・中世)の専門部会長5氏が講師を務めた。 「むんがたり」では「自然が語る徳之島の個性」(服部さん)、「徳之島の人びとと復帰運動」(皆村さん)などをテーマに、専門家の視点で徳之島の独自性について解説。深澤さんは約160年前に作られた地図「徳之島全図」で示された各地の砂糖蔵に焦点を当て、当時の集落の関係や物流について説明した。 「さらに深掘り」では▽町さん、深澤さん▽皆村さん、福宏人教育長▽服部さん、高宮さん―の3組が徳之島の歴史について対談。奄美・沖縄では狩猟採集の時代が他地域よりも長く続いた歴史があるとして、「旧石器時代から人が住み、狩猟採集から農耕への変化があった島は世界でも珍しい。奄美の島々の先史、古代、中世は世界自然遺産に匹敵する」との評価もあった。 会場には町内外から約200人が訪れた。昔の町の風景や人物を撮影した写真など、貴重な資料が多数展示されたほか、昭和初期に母間で作られていた大島紬「徳中柄」の図案や、図案に基づいて再現された反物「青海波と観世水」も初めて公開された。