市場参入から丸4年…楽天モバイルの現在地 “競争と共生”で成される「携帯市場の民主化」への道、鈴木CEOに聞く
■携帯市場にこそインクルーシブ(共生)な構造が必要「市場の底上げは4キャリア全ての命題」
――鈴木さんが以前から「競争ではなく共存。誰にでも平等にチャンスが与えられる社会を目指す」ことを進言されています。1982年に社会人になり、様々な経験を通して、なぜこのような考えに至ったのでしょうか? 【鈴木CEO】私が新入社員だった当時は、とにかく競争に勝つことが一番正しいんだという社会でした。競争が進歩を生むと言われて育ったんです。でも、今の日本をフラットに見ると、新しいマーケットを“皆で作る”という発想があってもいいのではないか? 人口は減少するので携帯市場全体の加入者数は劇的には伸びない。そうすると、通信の世界においても新しいマーケットを想像していく必要がある。そこは競争だけではなくて、共に作るような考え方があってもいいと思う。 ――技術や情報を独占することによる優位性を重要視するのがこれまでの考えだとすると、鈴木さんが見据えているのは、共有することで全体の底上げや新しい取り組みが生まれる可能性だと。まさにインクルーシブな考え方であり、携帯市場にこそ必要な構造だなと思います。 【鈴木CEO】仰る通りです。社会インフラだからこそ、よりインクルーシブな考えが必要だと思います。全体を底上げすることで、ユーザーの皆様により快適な生活をご提供する。これは4キャリア全ての命題です。ビジネスの観点から見ても、例えば、1兆円のマーケットで競争するよりも、新たに10兆円のマーケットを作り出して、そこでみんなで切磋琢磨するほうが遥かに成長できる可能性がある。これからはそういう視点も積極的に取り入れるべきだと思います。 ――ただ、一方では、“共存”や“共栄”が、単なる“模倣”に着地してしまう可能性もはらんでいます。つまり与えられるのみで、そこに創造性を持たないような模倣品のみが蔓延ってしまう状況です。受け身の姿勢では新しいものは生まれない。そのバランスを鈴木さんはどう考えますか? 【鈴木CEO】おそらく日本のような少子高齢化のなかで、今後大きな成長が見込まれないマーケットにおいては、“コピー型”で生き残っていける会社は非常に少ないと思います。だからこそ新しいマーケットの創造が必要だと思います。 ――この議論は生成AIを取り巻く環境とも似ているのかなと。短絡的に見ると、生成AIがなんでもやってくれるという考えになり、人間が考えることを放棄してしまうことにもなりかねない。でも賢く最新の出来たる技術を活用している企業は、その距離感が絶妙です。 【鈴木CEO】そうですね。ですから、僕はどちらかというと、AIの社会が進むと、より直感力などが重要になってくる気がします。AIの裏をかくくらいの直感力がむしろ重要になってくる。我々も引き続きDXには注力していきますが、進化したデジタル技術を駆使しつつ、いかに楽天独自の新しいサービスを矢継ぎ早に提供できるのか? その取り組みが刺激となり、より一層の“携帯市場の民主化”につながっていくと考えています。