市場参入から丸4年…楽天モバイルの現在地 “競争と共生”で成される「携帯市場の民主化」への道、鈴木CEOに聞く
■無謀と言われようが最後までやり遂げる“完遂力”「挑戦の火は消さない」
――22年に楽天グループに参画され、外から見てきた景色と中に入って感じたことの一番の差はどのような部分でしたか? 【鈴木CEO】とにかく決めたら最後までやるという“完遂力”ですね。初志貫徹というか、決めたら必ず完遂するまでやる。「決めたことは最後までやろう」みたいなことは皆が言うんですけど、そのレベルが段違いでした。それとスピード感。楽天グループは従業員数が約3万人というレベルで、たくさんの事業が存在しています。何か新しいことをしようとすると、どうしても時間かかってしまうはずなのに、この規模の組織でこれだけのスピード感を持っている企業は見たことがなかった。 ――それは鈴木さんが今まで歴任されてきた企業と比べても? 【鈴木CEO】全く違います。「今日決めたことは今日からやる」イメージですね。一般的な企業は、決めたことの計画書を承認してもらい半年くらいかけてやるとか、1年かけてやるというのが普通ですから。 ――その決断の速さと、最後までやり遂げる完遂力があったからこその携帯市場への参入だったんですね。 【鈴木CEO】その通りです。楽天が携帯キャリア事業に打って出たときに、周りからは「無謀な挑戦だ」などと言われました。でも、過去30年、なぜ日本がダメになってしまったのかを考えると、“無謀な挑戦”をする人がいなかったからだと思うんです。挑戦する人が本当にいなくなったら、もう日本は終わりだと思います。このまま世界の中でジリ貧になっていくしかない。 ――国民性もありますが、無謀な挑戦をどうしても切り捨ててしまう傾向があります。 【鈴木CEO】この30年間、アメリカと日本でどこに一番大きく差がついたのかというと、アメリカはGAFAMに代表されるような新しい企業がどんどん出てきて成長を牽引したことに尽きます。日本でもそのような“挑戦する企業”が無くなってしまったら、本当の意味で終わりを迎えてしまう。だからこそ、この挑戦の火を消してはいけない。 ――楽天グループの携帯キャリア事業への参入は、「挑戦の火」を消さないという所信表明でもある。 【鈴木CEO】そもそも大企業がイノベーションを起こすのは難しい。大企業のビジネスモデルは、基本的には現状容認型なんです。今日やっているビジネスが明日もつつがなく行われることを前提に最適化されている。逆に言えば、「今を守る」というDNAが構築されていることで、イノベーションを起こすことが極めて難しい状況に陥ってしまう。一方、楽天グループがなすべきことは、前進することであり、「今を守る」ことでは無い。