『エリア88』が描いた「無人戦闘機」から約40年 現実ではどこまで実現されているの?
アメリカが戦闘機を無人化する日は近いかも?
2025年1月に発足する第二次トランプ政権で、政府効率化省を率いる予定の実業家イーロン・マスク氏は2024年11月24日、X(旧Twitter)において、小型ドローン(無人航空機)の大群が編隊飛行する動画に対し「一方で、いまだにF-35のような有人戦闘機をつくっているマヌケもいる。ドローンの時代に有人戦闘機なんて時代遅れ。パイロットが犠牲になるだけだ」と投稿しました。 【画像】「未来、もう来てた」こちら日本が開発中の「戦闘支援型無人機」です この投稿については賛否両論あるようですが、創作の世界では30年以上前から戦闘を行なえる「無人戦闘機」が登場しています。 その嚆矢のひとつと言っても差支えないのが、新谷かおる先生のマンガ『エリア88』に登場した、パイロットの搭乗しないF/A-18A「ホーネット」でしょう。主人公の「風間真」らと空対空戦闘を行なっています。 真をはじめとする作中の戦闘機パイロットが凄腕だったといえばそれまでなのですが、当時、最新鋭機だったにもかかわらず、この無人ホーネットは簡単に撃墜されていました。 戦闘機同士が空対空戦闘を行なう場合、操縦するパイロットは撃墜されないために、相手が想像していない機動を行なうことがあります。無人ホーネットは、そのような機動を行なっていなかったことから、真らに無人機であることがすぐバレていました。 また作中で「ラジコン」と呼ばれていることなどから見て、AI(人工知能)によって飛行や戦闘などを自律的に行なえる自律型無人機ではなく、老朽化したF-4「ファントムII」などを遠隔操縦可能に改造したQF-4標的機などと同様の改造をF/A-18Aに施した上で、戦闘機能や自爆機能を追加した無人航空機だったものと考えられます。 マスク氏が念頭に置いている無人機は、この無人ホーネットのような航空機ではなく、AIが自らの意思で判断し、飛行や戦闘行動を行なう「完全自律型無人機」なのではないかと思います。 アメリカ空軍のテストパイロットスクールと、先進的な技術の研究開発を支援するDARPA(国防高等研究計画局)は共同で、F-16D戦闘機を改造する形で開発したX-62A可変飛行安定性試験機(VISTA)を使用し様々な研究開発を行なっており、このX-62Aは2023年2月に完全自律飛行、2024年4月にはパイロットの操縦するF-16との模擬空戦を行なっています。 X-62AがF-16との模擬空戦に勝利したのかは不明ですが、アメリカ空軍とDARPAは模擬的とはいえAI制御の無人機が戦闘も可能であることを示したとして、この実験を「画期的な進歩」と評価しています。 AIを無人機の活用範囲の拡張に使用するための研究開発は、アメリカ以外の国でも積極的に進められています。 日本では次期戦闘機とともに、これに随伴して自律飛行を行ない、次期戦闘機のパイロットの指示で偵察やミサイルの発射などを行なう、AIを搭載した「戦闘支援型無人機」の開発が進められています。 「ドローンの時代に有人戦闘機なんて時代遅れ」というマスク氏の言は極論なのかもしれませんが、これまで述べてきたように、AIが制御する戦闘用無人機の実用化は確実に近づいています。 ただ、このような戦闘用無人機が普及すればするほど、無人ホーネットと対峙した真のように、「この敵は…違う…冷たいんだ…血が通っていない」と違和感や恐怖感を覚える人も、多くなるのかもしれません。
竹内修