桂ざこばさん、情に厚い「感激屋」たぐいまれな「素直」な人/悼む
上方落語の重鎮、桂ざこば(かつら・ざこば、本名関口弘=せきぐち・ひろむ)さんが12日午前3時14分、ぜんそくのため、大阪府内の自宅で亡くなった。76歳。米朝事務所が発表した。 3代目桂米朝さんの弟子として古典落語を極め、99年に兄弟子枝雀さんが亡くなった後は、事実上の筆頭弟子として米朝一門を支えた。高座に加えて、歯に衣(きぬ)着せぬ発信力、老若男女から愛される人柄でタレントとしても活躍した。通夜、葬儀は家族葬で行い、後日、お別れの会を予定している。 ◇ ◇ ◇ 情に厚い「感激屋」。たぐいまれな「素直」な人だった。取材でも感情がたかぶると、泣いた。早くに父を亡くし、15歳で故米朝さんに入門したが、師匠を「ちゃーちゃん(父ちゃん)」と呼び、実父以上に慕った。戦後の上方落語を復興させた師匠に比べ「俺らなんもしてへん」と言い、大阪・動物園前に席亭を務める「動楽亭」を開いた。 毎年恒例の一門会。取材会の前後、喫煙室で必ず会った。「我慢でけん」と言いながら一服。それほどヘビースモーカーだったが、17年に脳梗塞を患うと、すぐ禁煙。「医者があかん言うから」だった。「ビビリやねん。痛いの(しんどいこと)いややねん」とも。 まだ喫煙されていたころ、「女の人は吸わん方がええで。子供にあかん」。そう言った、あの“真顔”が忘れられない。「不適切」な恐れもはらむ発言も嫌気は皆無。あったかい情しか感じさせない唯一無二の師匠だった。【村上久美子】