無料なのにVIP待遇「サッカー記者席」の大問題(3)続出した「キャンセル」とその後のペナルティ、改善すべき「格差」
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、有料の観客席よりも優遇される無料の記者席の「問題点」と課せられた「責任」について、自分自身に対する「戒め」とともに、立ち止まって考える。 ■【画像】「おふたりとも美しい」元日本代表DFと大河女優、バックハグに手つなぎ、そして…照れるほどの「ラブラブショット」に大反響
■横っ面を「ひっぱたかれた」
この大会では、大会前に取材したいグループステージの試合を申請し、イタリアに着いてADカードをもらうと、別のデスクで申請してある全試合のチケットを受け取るというシステムだった。その結果、チケットはもらっても取材にこない記者が続出してしまったのだ。(日本のある新聞社のカメラマンは、ローマでADカードと申請した試合のチケットを受け取ると、そのまま他の競技の取材をしにロンドンに飛んでいってしまい、決勝戦まで戻らなかった)。 観客用チケットはほとんど売り切れで、チケットを欲しがっている人がたくさんいる中、あまりに記者席に空席が多いことを気にしたイタリアの組織委員会は、手の空いているスタッフを総動員して記者席に座らせたほど、この大会の「取材キャンセル」は多かった。 スタンドに設置した記者席を撤去し、一般席にするのは簡単な作業ではない。しかもトリノのスタジアムは準決勝が行われることになっており、この大会で使われたスタジアムの中では、開幕戦会場のミラノ、決勝戦の行われるローマに次いで、多くの記者を収容できるようになっていた。 記者席がどれほどのスペースを占めているか、いつもバックスタンドで試合を見ているファンは「何をいまさら」と思うかもしれない。しかし、人間はときに自分がどれだけ恵まれているか、「想像力」に欠けてしまうのだ。あのトリノの記者席を見た瞬間、私は横っ面をひっぱたかれた思いがしたのである。
■なぜ「優遇」されているのか
以後のワールドカップでは、記者の入場券は試合の前日か当日のキックオフ3時間前までに試合の行われるスタジアムに設置された「スタジアム・メディアセンター」で受け取ることになり、また、入場券を割り当てられていながら連絡なく取材に現れなかった(「ノー・ショー」と呼ばれる)記者は、以後の試合で割り当てを受けられないなど、ペナルティが科されることになったため、記者席がガラガラになることはなくなった。それでも、「記者席が大きなスペースを使う」という事実は、現在まで変わることはないのである。 試合の主催者は、なぜこれほど「記者」を優遇しているのか。それは、新聞や雑誌、今日ではインターネットなどによる報道が、大会の成功の大きなカギとなるという認識を持っているからに違いない。メディアの評価は大会の評価に直結する。メディアから批判ばかり出るようなら、大会のスポンサーが減り、テレビの視聴率も落ちて、放映権収入にも影響を与えるだろう…。
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