トリプルレッドとなった「次期トランプ政権の政策」を考察する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。
●トリプルレッドでトランプ氏の政策は進めやすい体制に、ただし主な政策には良い面も悪い面もある。 ●前トランプ政権時、減税は規模縮小で2017年中に成立、関税引き上げは中国に対し長期戦に。 ●減税は年内成立、関税引き上げは時間をかけて実施か、市場は慣れもあり総じて冷静な反応も。
トリプルレッドでトランプ氏の政策は進めやすい体制に、ただし主な政策には良い面も悪い面もある
米大統領選と連邦議会選の結果、共和党候補のトランプ氏が勝利し、上下両院とも共和党が多数派を占める「トリプルレッド」が達成されたことで、トランプ氏にとって自身の掲げる政策を進めやすい体制が整いました。トランプ氏は来年1月の大統領就任後、通商政策や移民政策、規制の改廃など大統領令でできる政策に加え、税制改正など議会の協力が必要な政策も、順次進めていくと思われます。 トランプ氏の大統領就任後、早々に着手が予想されるのは、不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和などですが、現時点で各政策の具体的な内容や優先順位については、まだ明確ではありません。トランプ氏の主な政策は、米国経済にとって良い面だけでなく、悪い面もあるため(図表1)、市場は期待や思惑に振れやすい状況にあり、特に減税や関税引き上げには高い関心が集まっています。
前トランプ政権時、減税は規模縮小で2017年中に成立、関税引き上げは中国に対し長期戦に
そこで、前回のトランプ政権時、減税や関税引き上げがどのように実施されたかを振り返ってみます(図表2)。トランプ氏は2017年12月22日、10年で1.5兆ドルという大型減税法案に署名し、同法が同日成立しました。ただ、減税規模は2016年の選挙期間中に掲げた5兆ドルからは減額となりました。また、10年で1兆ドルのインフラ投資を促進するという政策は、前トランプ政権の4年間で実現しませんでした。 関税引き上げの動きは、2018年11月の中間選挙が近づくにつれ、目立つようになりました。日本、カナダ、欧州連合(EU)との貿易協議は短期戦(成果を中間選挙でアピール)に位置付けられた一方、中国との貿易協議は長期戦と位置付けられ、実際に、米中の関税引き上げ合戦は、2019年9月の第4弾まで続き、2020年1月15日に両国が経済貿易協定に正式に署名、米中貿易摩擦問題はいったん落ち着いた格好になりました。
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