「アメリカ二大政党制の岐路」(1)ティーパーティがもたらした妥協なき政治 上智大学教授・前嶋和弘
アメリカでは昨年11月の中間選挙の結果を受けた新しい連邦議会(第114議会)が1月5日(アメリカ時間)にスタートしたばかりですが、上下両院いずれも多数派となった共和党と、オバマ政権・民主党との激しい対立が目立ちつつあります。まずは、昨年末に民主党が多数派を占めていた上院で僅差で否決されたカナダとテキサス州を結ぶ石油パイプライン「キーストーンXL」の建設承認が大きな争点となっており、1月20日(日本時間21日朝)のオバマ大統領の一般教書演説がどんなものになるのかに注目が集まっていますアメリカ政治はここ数年、重要法案がほとんど立法化できず、息が詰まるような状況が続いてきましたが、早くも昨年までの数年間と何も変わらない膠着状態となっています。 ではここ数年、なぜ共和党と民主党の妥協のない対立が続いているのでしょうか。また、「決められない政治」に対する国民の意識はどうなっているのでしょうか。さらに、この状態に変化の兆しはないのでしょうか。 これについて、今回から4回にわたり、考えてみたいと思います。今回はまず、二大政党の膠着状態が続いている短期的な原因である、草の根保守のティーパーティ運動の台頭について論じてみます。
民主党との妥協を許さない強硬さ
ティーパーティ運動は、オバマ政権が誕生して間もない2009年春ごろに誕生し、一気に全米に広がっていきました。「財政保守」「小さな政府」が運動の主な主張で、ここ数年のアメリカの政治を大きく揺さぶっています。 この運動に支持され、「反医療保険改革(反オバマケア)」「反増税」「小さな政府」を訴える共和党の「ティーパーティ候補」たちが2010年秋の中間選挙で下院を中心に議席を奪いました。2011年3月時点で「ティーパーティ議員連盟」に加盟した議員は、新人、現職を合わせて、その数は下院435議席のうち、約60と15%に満たない程度の数ですが、民主党側との妥協を一切許さない強硬な議員たちばかりであるのが特筆されます。