仏教の視点で考える「形式だけの不要な会議」との向き合い方
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。 こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 今回、紹介するのは『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』(松波龍源著、野村 高文編集、イースト・プレス)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
仏教は思想
皆さんの多くの方が、法事やお葬式で触れる仏教をイメージされているかもしれません。また、例えば修学旅行や海外からの観光客の人気スポットとしても、金閣寺、清水寺、龍安寺などのお寺は存在感があります。 諸説ありますが日本人の多くは無宗教とも言われていて、初詣やクリスマスなどのイベントで様々な宗教の慣習に触れています。 キリスト教やイスラム教などは一神教と言われているのに対して、元々の仏教には絶対的な「神」の存在を想定しない「無神的宗教」であるという特徴があります。 仏教は宗教の一つと扱われますが、思想や哲学の色が強いものです。その思想体系に触れていくと、古いという感じは全くなく、今なおより意味を持つものだと感じさせます。 著者の松波龍源さんはビルマ語を学び、中国で5年間の武術修行を経て、真言宗の寺院で修行を重ね僧侶となられました。実際にミャンマーに行き、現地の高僧の話を直接聞かれ、源流と言える仏教思想にも明るい方です。 仏教思想という深い世界への導入に、メタバースやブルシット・ジョブなど身近なテーマが取り上げられています。それらの単語が著者の教えを通すと、普遍的な内容を秘めていることに驚きがあります。
メタバースとメタ認知
主にインターネット空間上の仮想空間のことをメタバースと呼びます。メタバース空間内では自分の代わりに動くアバターを操作して、他のアバターと交流します。ログインしてその世界観に入ることと、現世に暮らすことが近いかもしれないと言われるとちょっと戸惑うかもしれません。 著者によると、仏教のゴールは「さとり」の境地に達することであり、言い換えると完全なるメタ認知を獲得して、時間や空間の認知スケールを自由自在にコントロールできるようになることだとされています。 現実世界を一つ上の世界から眺めると、今の体もアバターのようなものとすら言えるそうです。一つ上の世界から見ると、この世界がメタバース。我々の世界から見ると、画面に映し出された世界が一つ下のメタバースということになります。 私たちが恐れる「死」というものも、一つ上の世界から見ると、メタバースにおけるログアウトとも考えられます。 私自身は宇宙が入れ子、別の言葉ではフラクタル構造のようになっているようにも思っています。原子のスケール、惑星のスケール、太陽系のスケール、銀河系のスケールで似たような構造になっているのも興味深い事象です。 もしかしたら、我々が想像しているビッグバンによる宇宙の誕生ですら、一つの星の誕生のように見えるスケールがあって、メタな視点からもっと大きな宇宙の一部に過ぎないのではとも考えられます。 私たちのビジネスにおいても、時間や空間の認知スケールを自由自在にすれば、より複雑化する環境もうまく渡り歩けるかもしれません。今は変化の激しい時代なので、予想通りに戦略や施策の結果が得られないことが多くなります。 その時に時間軸を柔軟に変え、成果までの期間を早めたり遅らせたりして、目標に向かうことが組織運営上望ましいスタンスかもしれません。これも仏教思想によるメタ認知の応用と言えそうです。