生まれつき重度難聴のある女の子。手で音楽を奏でるホワイトハンドコーラスとの出会い【体験談】
自分と違う個性を自然に受け入れられるように
さまざまな個性をもったメンバーがいるホワイトハンドコーラスで活動する中で、明凛ちゃんには多様性を受け入れる力も自然に身についているそうです。 「メンバーには目が見えにくい人、車椅子の人など、さまざまな特徴を持つ人がいます。明凛も車椅子を押させてもらったことがあります。初めは怖がっていたけれど、どう動かせばカーブしやすいかなど、動かし方を教えてもらいながらチャレンジしてみたら、人の役に立つ喜びを知ったようです。 いろいろな個性を持つメンバーと出会ったことで、相手が何ができないかではなく、何ができるかを見ようとしたり、自分がどうサポートをすれば相手のできることが増えるかを想像できるようになったと思います。明凛にとってそれは特別なことではなく、お友だちとのかかわりのなかで自然に身についてきたこと。ホワイトハンドコーラス自体が、ボーダレスな社会になっているのでしょう。この世界観が周囲に広がれば、もっと優しい世の中になるんだろうな、と感じます。 私自身も障害のある子を育てる親として、明凛のできることに目を向けて、それを伸ばしていくことの大切さを知りました」(直美さん) 直美さんは、明凛ちゃんに難聴がある事実は変えられなくても、解釈しだいで前向きに楽しく生きられる、と考えているそうです。 「難聴や障害があって生まれてくることは、喜ばしいことではないかもしれません。でも、だから不幸かというと、それは違うと思っています。ホワイトハンドコーラスに出会った私たちのように、その個性を持って生まれたからこそ、出会える人や経験できることがあるはず。難聴があるという事実は変わらないけれど、明凛が幸せに生きることを目的に、これからも親子で楽しい経験をたくさん積み重ねたいと思います」(直美さん)
子どものできることを見つけて伸ばしたい【ホワイトハンドコーラスNIPPON代表 コロンえりかさんより】
練習に見学にくるほとんどの保護者が「このくらいしか聞こえないんですが…」「知的障害があるから理解できるかわからないけれど…」と、子どものできないことを心配しています。けれど練習を通してその子のできることを見つけていくことで、子ども自身も親も変化していくと感じます。 子どもが「1人の人間」として、コミュニティに必要とされる存在なんだという自覚が生まれた瞬間、表現力や表情だけでなくすべての行動が変わります。たとえば、自分で練習場所の椅子を並べたり、自分の意見を言えるようになったり、自分の言葉で考える力がついたり。さらに舞台の本番を経験して得られた自信が、子どもを大きく成長させるのだと思います。 障害のある子どもを育てる親は、孤立して悩んでしまうことが多いように感じますが、私たちの仲間のように、手話や点字を使う子やいろんな違う才能を持った子たちが、いきいきと自信を持って演奏する姿を見てもらえたらなと思います。 お話・写真提供/秋山直美さん 取材協力/コロンえりかさん、ホワイトハンドコーラスNIPPON 写真/MarikoTagashira、Miyuki Hori 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部 ホワイトハンドコーラスNIPPONで出会ったお友だちの姿にあこがれて、明凛ちゃんは「その子のようになりたい」と演奏会のMCなどいろんなことにチャレンジしているそうです。 「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部