生まれつき重度難聴のある女の子。手で音楽を奏でるホワイトハンドコーラスとの出会い【体験談】
ハンディキャップは社会が作るもの
明凛ちゃんが5歳で年長だった夏、直美さんは知人の紹介で「ホワイトハンドコーラスNIPPON」に出会います。ホワイトハンドコーラスNIPPONは、2020年に活動を開始したインクルーシブ合唱団。声で歌う「声隊」と歌詞を手話で表現する「サイン隊」で構成され、聴覚や視覚、身体に障害のある子どもも障害のない子どもも一緒に演奏を行います。もともとは26年前にベネズエラで生まれ、サイン隊が白い手袋をして歌の世界を表現したことから「ホワイトハンドコーラス」と名づけられました。 「人工内耳を装用する前から、明凛は歌うことや踊ることが大好きでした。知人に紹介してもらい練習を見学してみたら、私も明凛も、ホワイトハンドコーラスのみなさんのことをすぐに大好きになりました。 子どもたちを指導する先生たちの考え方は『ハンディキャップはその子自身の問題ではなく、社会が作るもの。耳が聞こえにくいとしても、手話を用いたり、大きな声で話したり、社会がその人が生きやすいように対応すれば、ハンディキャップではなくなる』というもので、すばらしいと感じました。 練習に集まる人たちの空気感がとてもあたたかく、『ここを明凛の居場所にできたらいいな』と感じました。明凛も『すごく楽しかった!』とすぐにサイン隊への参加を決め、毎週日曜日の練習に通うようになりました」(直美さん) 明凛ちゃんは手話の練習をしたことがありませんでしたが、サイン隊の練習に参加するようになってから、歌詞を手話で表現する「手歌」の練習を重ねました。 「何曲もの手歌を覚える必要がありますし、さらに音楽を表現しないといけません。かなり集中力も必要だと思いますが、明凛はとっても楽しそうです。もともと踊ることも大好きだった明凛にとっては、手歌をダンスのようなイメージで覚えているのかもしれません。 ホワイトハンドコーラスのすばらしいところは、子どもが自分たちで歌詞から手歌を考えるところです。先生方は、子どもたちが考えた手歌の意味を表現するために、どんな空気感を作るか、どんな気持ちで表現するのかを指導してくれます。毎週の練習を通して、明凛自身の心もずいぶん成長したと感じます」(直美さん) ホワイトハンドコーラスの活動は、その高い芸術性から国内外で注目を高めています。2024年の2月には、オーストリアの財団が主催するバリアフリーのアカデミー賞「ゼロ・プロジェクト・アワード」を受賞。そして、ウィーンの国連事務局の特設会場で、ウィーンの合唱団との共演により、ベートーヴェンの交響曲『第九』の演奏を行い、大盛況を収めました。帰国後には、神奈川県庁や都庁へ表敬訪問をするなど、さまざまな場所で演奏活動を行っています。 「ウィーンでの演奏を終えて帰国してから、明凛のパフォーマンスの変化を感じます。以前は、覚えた動きを手で再現する感じだったのが、自分の想いを伝えようとする能動的な表現になってきました」(直美さん)