15日にオランダ下院選挙 反移民・反EUの極右「自由党」は躍進するか?
自由党ウィルダース党首とはどんな人物か?
オランダ下院選挙における事実上の主役として注目が集まる、自由党のウィルダース党首は独特のヘアスタイルから現地では「モーツァルト」とうニックネームでも呼ばれているが、流暢な英語も話し、一見するとアムステルダムの金融街で働くビジネスマンのようだ。 19年前には自由民主国民党から国会議員に当選。しかし、トルコのEU加盟の可能性に好意的な見方をしていた党の方針に反対し、しばらくの間は独立系議員として活動を行い、2006年に自由党を結党した。政策として掲げたものは、反イスラムと反EUの2点で、オランダ国内のイスラム学校の閉鎖やコーランの販売禁止、イスラム系移民の受け入れ禁止を訴え、オランダのEUからの離脱、風力発電事業や海外への経済支援を減らす代わりに軍事費を増やすべきだと主張している。 極右のウィルダース党首を支持する有権者が少なくない一方で、右傾化が懸念される現在のオランダ社会に対するアンチテーゼとして若者を中心に支持率を着実に伸ばしている政党が、グロエンリンクス(緑の党)だ。 1989年に4つの左派政党が合併して作られたグロエンリンクスは、2015年に若手下院議員のジェシー・クラーベル氏が党首に就任。1985年生まれのクラーベル氏は25歳で下院議員に当選し、30歳で党首に就任という異例のスピード出世だ。モロッコにルーツを持つ父親と、オランダとインドネシアにルーツを持つ母親との間に生まれたクラーベル氏は、多文化主義のオランダを象徴するような存在で、カナダのトルドー首相に似たルックスにも人気が集まっている。EU賛成派で、移民の受け入れにも積極的なグロエンリンクスは、多文化に寛容なスタンスをとっており、大都市や学生街では人気を維持している。
議席増でもウィルダース氏の政権関与は不可能か
選挙直前の11日にロッテルダムで予定されていた、トルコ人らによる改憲支持集会に参加しようとしたトルコ外相は空路での入国が認められず、陸路でオランダ入りした家族・社会担当大臣は、領事館の入り口前でオランダ警察に制止され、警察の護衛でオランダを強制的に出国させられた。 この一件は、かねてから西ヨーロッパ諸国に対して批判的な言動を繰り返してきたトルコのエルドアン大統領を激怒させ、オランダやドイツ政府を「ナチスの残党」と呼ぶ暴挙に出ている。このタイミングでエルドアン大統領がオランダを声高に非難することで、皮肉な話ではあるが、オランダ国内における右派勢力の支持率は上昇した。13日にオランダ国内で行われた最新の世論調査によると、ウィルダース党首率いる自由党(現在12議席)と、ルッテ首相が所属する中道右派の自由民主国民党(同40議席)の予想獲得議席数がそれぞれ数席ずつ増える可能性が生じている。しかし、自由民主国民党は最大でも30議席程度しか獲得できないとの予測が根強く、数議席増えたとしても、議席数の激減は必至だ。