ロヒンギャ難民を苦しめる“サイクロン”被害 WFPバングラデシュ代表が支援訴え「再び直撃なら深刻な事態に」
大型のサイクロンが5月中旬、ミャンマーとバングラデシュを直撃し、少数派イスラム教徒のロヒンギャが身を寄せる難民キャンプでは多くの難民が住まいを失った。WFP(世界食糧計画)バングラデシュ事務所代表のドム・スカルペリ氏が5月末、都内で日本テレビのインタビューに応じ、「サイクロンの季節は始まったばかりだ」として支援の必要性を訴えた。
――ロヒンギャ難民キャンプでは、サイクロンによりどのような被害が出たのでしょうか。 (注:ロヒンギャ=ミャンマーのイスラム系少数民族。ミャンマー軍などの迫害から逃れてきた約100万人が、バングラデシュの難民キャンプで暮らしている) 2週間ほど前(5月中旬)、ミャンマーとバングラデシュを大型サイクロンが襲いました。サイクロンはバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプにも大きな被害をもたらし、数万もの住居を破壊しました。 国連は先日、バングラデシュにおけるサイクロン対応で約4000万ドルの支援を呼びかけましたが、そのほとんどは住居再建の費用になります。サイクロンの季節は始まったばかりなので、再び大型サイクロンが直撃するようなことがあれば、非常に深刻な事態となります。 ロヒンギャ難民は通常、竹やビニールシートでできた簡易的なシェルターで暮らしています。こうしたシェルターはサイクロンの被害を受けやすいだけでなく、火災が発生する危険性も非常に高まります。キャンプでは毎年200件以上の火災が発生し、多くの人が住まいを失っています。 サイクロンや火事、さらに食料配給の削減も重なり、次から次へと衝撃が襲ってくるようです。ロヒンギャの人々は常に大きな苦しみにさいなまれています。
――サイクロンの被害が拡大する中、なぜ食料配給が削減されたのでしょうか。 国際社会による支援がウクライナに集中しているため、世界各地で展開中のWFPの活動においても、資金不足で配給削減を余儀なくされています。WFPは以前はロヒンギャ難民1人あたり「月12ドル」を支給していましたが、3月には1人あたり「月10ドル」に削減、6月からは1人あたり「月8ドル」に削減されます。1食あたりは約13円となりますが、これだけでは卵半分も買えません。 ロヒンギャの人々は、家族や子どもたちのために料理を作ることができるか、十分な食料がない状態でどうやって月末まで過ごすことができるか、とても心配しています。食料配給を削減する前からキャンプ内の栄養不良は深刻で、ほとんど緊急事態のレベルでした。今回の削減により、状況はさらに悪化するでしょう。 難民キャンプで暮らす約100万人の半分は子どもですが、食事量が少なければ免疫力が低下し、病気になる可能性も高まります。しかし、医療機関も資金不足に悩まされているので、さらに大きな危機へと転がり落ちてしまう可能性もあります。