西日本に続々サッカースタジアムが建設される「怪」
変化するスタジアムの役割
かつて、スタジアムは都市近郊の公園など広大な土地に建設され、陸上競技やサッカー、ラグビーの兼用とするのが普通だった。毎年開催されてきた国民体育大会(現、国民スポーツ大会)のために、各都道府県はこうしたスタジアムを建設してきた。 Jリーグで使用されているスタジアムでも、たとえば横浜F・マリノスの本拠地で2002年W杯や2019年のラグビーW杯で決勝戦が行われた横浜の日産スタジアムやFC東京と東京ヴェルディが使用している味の素スタジアムなどは、もともと国体のために計画されたスタジアムだ。 こうした陸上競技と球技兼用型の巨大スタジアムは世界的にも一般的な存在だった。 だが、20世紀末頃からヨーロッパのサッカーでも、アメリカの野球(MLB)やフットボール(NBA)でも都心部に立地し、ホテルや会議場、ショッピングセンターなどを併設するスタジアムが増えてきている。それによってイベント開催時以外にも人々が集まることでコミュニティーの中核となることができるし、スタジアム側の収入源にもなるのだ。 どうやら、日本にもそうした流れがようやく到達したようだ。 野球場でも2009年には広島に「マツダズーム・ズームスタジアム」が完成。さらに、2023年には北海道日本ハムファイターズが札幌近郊の北広島市に「エスコンフィールド」を完成させた。これらの野球場は球団自身が主体となって設計・施行から運営までを行っているもので、いずれもファウルグラウンドを狭くして観客席からフィールドまでの距離を短くするなどアメリカのボールパークに近い、観客目線を優先した設計になっている。 ところで、今回は最新のサッカースタジアムをいくつかご紹介したが、その多くが西日本に立地していることにお気づきだろうか? 東京都や神奈川県など首都圏にももちろん多くのJリーグクラブが存在する。だが、ほとんどは20世紀のうちに完成した比較的古いスタジアムを使用しており、その多くが陸上競技との兼用競技場なのだ。 それは、いったい何故なのだろうか? いずれ稿を改めて考えてみたい。
後藤 健生(サッカージャーナリスト)