「3度目の正直」で聖地へ 初出場の石橋、総合力の高さ光る センバツ出場校紹介
石橋(栃木)は21世紀枠で春夏通じて初の甲子園出場となる。2017、21年と過去2度、関東・東京地区の候補校に選出されながら落選。「三度目の正直」で春夏通じて初の聖地への切符を手にした。横松誠也(ともや)主将(2年)は「2回分の先輩の思いがある。『お前たちだからこそ甲子園に行けた』と思ってもらえるプレーをしたい」と力強く宣言する。
公立で唯一、県大会ベスト4
昨秋の栃木大会直前、主力に新型コロナウイルスの陽性者が相次ぎ、ベストメンバーが組めなかった。それでも1回戦から3試合連続の2桁得点でいずれもコールド勝ちし、準々決勝も継投で零封勝ち。準決勝では青藍泰斗に敗れたが、五回までは無失点に抑えるなど、粘り強く戦った。福田博之監督が「正直、ここまでやれるとは想像していなかった」と驚くほどの総合力の高さを示し、ベスト4に入って21世紀枠で選ばれた。
躍進の立役者は1年生右腕・入江祥太と左腕・藤巻翔汰。入江は丁寧にコースを突く直球とスライダーを武器に、上三川戦では五回まで6奪三振。継投の藤巻は打っても上三川戦で適時三塁打を放つなど勝負強さを発揮した。
「全ての人に感謝」監督の目に涙
打線は1試合平均8.6得点と高い攻撃力を誇った。上位から下位までどこからでも好機が作れ、切れ目がない。キーマンは1番の大金。本来は中堅手だが、昨秋は主力の体調不良で捕手に回った。打撃では6割超の高打率をマークし、チームトップの4盗塁と50メートル6秒台前半の走力も生かした。「出塁につなげられるようにゴロを意識してきた結果が出た」と話す。県大会は選手の体調不良によりフルメンバーではなかったが、4強に進み、選手層の厚さを見せつけた。 関東・東京地区候補校となった第89回、93回は選考で惜しくも落選し、初の甲子園出場を逃している。2度の落選を知る福田監督は「野球部の先輩たちが築いてくれたものは大きい。伝統を作ってくださった卒業生など全ての人に感謝したい」と涙を浮かべた。横松主将は「自分たちの持ち味は元気の良さ。甲子園でも活気あふれるプレーを観客の皆さんに見てもらいたい」と意気込む。 石橋は、有志の医師らでつくるNPO法人と連携して肩肘検診などを実施し、地域の子どもたちの障害予防にも取り組む。13年から毎年、地域の小学生を対象に野球教室を開催しており、野球指導だけに終わらず、医師や理学療法士らによる肩肘の検査を行っている。 平日は毎日7時間授業で練習は放課後の2時間。グラウンドも他部と共用の中、工夫を重ね、力をつけた。福田監督は「さらに高い意識を持って、頑張っていきたい」と意気込んだ。
OBに作家の室井佑月氏さん
1924年、県内8番目の旧制中学「石橋中学校」として開校し、48年から現校名。共学で、生徒数は710人。昨年度は135人が現役で国公立大学に合格するなど、県内有数の進学校として知られる。 野球部は35年創部。部員は2年生19人、1年生18人の計37人(マネジャー5人を含む)。同校は第89回、93回大会の「21世紀枠」関東・東京地区候補校に選出されたが、甲子園の出場経験は春夏ともにない。 他の部活動も盛んで、放送部や陸上部は全国大会に、吹奏楽部は東関東大会に出場した実績がある。歴史研究部は22年、全国大会で優秀賞を受賞した。 学校OBは作家の室井佑月氏ら。