存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?
アシッド・グリーンで対外的な主張は充分
もともと595のサウンドが好きだったわけではないし、バッテリーEVに排気音が必要だとも思わない。自分があえてオンにして、本当は静かなクルマで人工的な排気音を楽しんでいると受け止められることへ、若干の抵抗もある。 高速道路を延々と走る場面では、低音が少し耳障りでもある。アバルトらしい個性を強めているとしても、この表面的なギミックが不可欠とはいえないだろう。だから、オン/オフを選べるのかもしれない。人工音を楽しんでいる人を、否定するつもりもない。 対外的な主張は、既に充分ある。サイズは小さいものの、ラッパーのカニエ・ウェスト氏並みに路上では目立つ。アシッド・グリーンと呼ばれる鮮やかなボディカラーもあって、スーパーの駐車場で見失う可能性はほぼない。 市街地を運転していると、人工音なしでも沢山の目線を感じる。遥かにパワフルな、最新のスポーツカーを試乗している時より。 小さくて目立つだけでなく、動力性能もアバルト級が目指されている。引き上げられた加速力と敏捷性は、とても楽しいフィアット500e以上の価値を、どれほど生み出したといえるだろうか。これは、長期テストで探りたいポイントの1つだ。
現在のEVならではの制限を、楽しさは上回る?
英国価格はお安くない。185Lの荷室と、荷物置き場に近いリアシート、航続距離250kmが与えられたバッテリーEVのお値段は、オプション込みで3万8795ポンド(約784万円)になった。 もっとも、内燃エンジンのホットハッチでも、このくらいの値段の選択肢が存在することは確かだ。動力性能では、遥かに勝るかもしれないが。 現在のバッテリーEVならではといえる制限を、運転の楽しさは上回るだろうか。今後数か月をかけて、電動のアバルトを検証してみたい。
セカンドオピニオン
自分は、実はアバルト500eが大好き。郊外の一般道を楽しく感じさせるバッテリーEVであり、都市部での生活にも溶け込める。ただし、ホットハッチとしては少しエネルギッシュさが足りないかも。 人工サウンドは、そこまで体験を左右しないように思う。サソリのエンブレムは、伊達ではないといえるだろうか。ベースとなった、フィアット500eとの違いにも興味は湧いてくる。 イリヤ・バプラート(Illya Verpraet)
テストデータ
■価格 モデル名:アバルト500e ツーリスモ(英国仕様) 新車価格:3万8195ポンド(約772万円) テスト車の価格:3万8795ポンド(約784万円) ■オプション装備 アシッド・グリーン塗装:600ポンド(約12万1000円) ■テストの記録 電費:5.9km/kWh(WLTP値) 航続距離:252km(WLTP値) 故障:なし 出費:なし
フェリックス・ペイジ(執筆) 中嶋健治(翻訳)